水中モードに変化する仕組みを解明!
チームは、ロリッパの水没後にどのような遺伝子が働いているかを調査。
これまでの研究で、気孔の発生メカニズムは詳しく解明されており、若い葉の表皮細胞において、SPCHやMUTEなどの遺伝⼦が発現し、これによって細胞が気孔に分化することが分かっています。
今回の遺伝子解析の結果、ロリッパは水没1時間でこれらの遺伝子の発現を抑制し始め、24時間後にはほとんど発現しなくなっていました。
これが、水中での気孔がなくなる直接の原因でした。
では、ロリッパはどうやって水没を感知しているのでしょうか?
それを調べてみると、植物ホルモン「エチレン」に関連して遺伝子発現が変化することが判明しています。
そこで陸上で育てているロリッパにエチレンを作用させてみると、気孔の発生が抑制されたのです。
エチレンは果物の熟成などに関わっていて、エチレンガスを充満させた保存庫に入れておくとバナナの熟成が早く進んだりします。
このようにエチレンは気体として働くホルモンなので、植物からはどんどんガスとして放出されていきます。
しかし気体であるエチレンは、ロリッパが⽔没すると逃げ場を失って体内に蓄積されていきます。
この体内に蓄積されるエチレン量が水中モード切り替えのスイッチになっていたようです。
エチレンが体内に蓄積すると、ロリッパは気孔の発生に必要な遺伝子が抑制され始め、⽔中葉へとすばやく変化していたのです。
今回の研究は、水中葉の形成メカニズムを遺伝子レベルで解き明かした世界初の成果となります。
このように、植物に備わっている環境変化への応答のメカニズムを知ることは、気候変動から植物を守る方法や、環境が変化しても生産性が落ちない農作物を実現させる上で貴重な手がかりとなるでしょう。