片頭痛がある人とない人での「頭痛パターン」の違い
まず片頭痛がない人の場合でも、ネガティブ思考が原因で日常経験する頭痛があり、それは主に「緊張性頭痛」でした。
この人たちは先の3つのプロセスのうち、「考え続ける義務感」が強いと1カ月後の頭痛の重症度が低下しており、「問題が解決できない不全感」が強いと1カ月後の頭痛の重症度が悪化していました。
「考え続ける義務感」はネガティブな反復思考の始まりであり、まだそこまで「こじれていない」ため、頭痛から気をそらす働きがあると思われます。
しかし、次の「問題が解決できない不全感」に至ると、首や肩に力が入って緊張性頭痛がひどくなると研究者は指摘します。
これを図示したのが下の図です。(矢印は頭痛の重症度の低下と上昇)
これを見ると分かるように、片頭痛がある人の場合では、「問題が解決できない不全感」が強いと、1カ月後の頭痛による日常生活への支障は低くなっていました。
ところが、最終段階の「ネガティブな反復思考」の程度が強いと、1カ月後に頭痛の重症度が高くなっていたのです。
これについて研究者は、次のように解釈します。
「問題が解決できない不全感はかなりつらい状態だと考えられますが、まだなんとか頑張ろうとしているとも言えるでしょう。
そのため、頭痛の重症度を低下させる働きを保っているのかもしれません。
しかし、ネガティブな反復思考として本当に手に負えなくなると、頭痛による支障の度合いを高めてしまうのです」
ネガティブ思考は短期的には頭痛を和らげる?
さらに本研究では、新たに92名(女性69名、男性22名、無回答1名)を対象に1週間という短い間隔で同じ調査をしました。
すると、片頭痛の人の中では、ネガティブな反復思考の傾向の高い人ほど1週間後の頭痛の程度が弱まっていたのです。
これにより、ネガティブ思考は短期的には片頭痛を緩和する効果があると見られます。
以上の結果から、ネガティブな反復思考には、短期的に頭痛を緩和する効果があるために、その後もさらに持続するようになり、そのせいで長期的にはより頭痛の程度を悪化させるメカニズムがあると結論されました。
チームは今後、ネガティブな反復思考を低減させる心理療法が片頭痛の緩和に有効かどうかを確かめる予定です。
鎮痛薬を用いると頭痛が慢性化しやすいことが知られているため、こうした心理療法は薬物を使わない治療として期待できるかもしれません。