仮眠で創造的なアイデアが見つかる!
実験では、49人の参加者を4つのグループに分けました。
1つ目のグループには45分間の仮眠時間が与えられ、TDIによって「木」に関する夢を見るよう促されます。
入眠して夢を見るごとに起きてその内容を記録し、時間になるまで同じことを繰り返してもらいます。
2つ目のグループにも45分間の仮眠をしてもらいますが、ここでは頭に浮かんできた雑多な考えをぼんやりと見つめてもらいました。
残りの2グループは起きた状態で45分間を過ごしてもらいますが、うち1つは「木」について、もう1つは頭に浮かぶ雑念に考えてもらいます。
要は先の2グループの寝ないバージョンです。
45分後、参加者には創造性に関する3つのタスクに取り組んでもらいました。
1つは「木」をテーマにした創造的な物語を書くストーリーテリング課題です。
これを実験者がランダムに(参加者がどのグループに属しているかは知らない状態で)評価したところ、入眠期に「木」の夢を見るよう促されたグループが最も創造的なストーリーを作成したと評価されました。
加えて、そのグループ内でも「木」の夢を見た回数の多かった人ほど、ストーリーが創造性に富んでいたそうです。
また単に仮眠をしただけのグループも、起きていたグループより創造性が高いと評価されました。
2つ目のタスクは、「木」の創造的な使い方や活用法を思いつく限り挙げてもらう課題です。
その結果、やはり入眠期に「木」の夢を見たグループは、単に仮眠を取ったグループより43%、仮眠をせず起きていたグループより78%も創造性のスコアが高いと評価されました。
3つ目のタスクは、名詞のリストを渡され、それぞれの名詞について最初に思いつく動詞を答える課題です。
すると仮眠を取った2グループは、創造性の指標の一つである「意味距離(semantic distance)」において高いスコアを示しました。
意味距離とは、2つの単語の意味がどれだけ離れているかを示すものです。
たとえば「母」と「父」は意味的に近い場所にありますが、「母」と「カエル」はより遠くに離れています。
この意味距離が遠い単語を思いつくほど、創造性に優れていると考えられています。
そして仮眠を取ったグループは起きていたグループに比べて、意味距離がはるかに大きい単語と動詞の組み合わせを答えていたのです。
以上の結果を受けて、研究主任のキャスリーン・エスファハニー(Kathleen Esfahany)氏は「入眠期に覚醒することで創造力が高まると思われる」と指摘。
その上で「さらに入眠期に見る夢は、脳が覚醒時には思いつかないような異質な概念を広範囲に結びつけて、創造性を高めているのでしょう」と述べました。
ヒプナゴジアの海を漂っているアイデアを拾って現実に持ち帰ることができれば、普通では思いつかない斬新なアイデアをつかむことができるのです。
世界の宮崎駿さんも「仮眠法」を実践している?
しかし私たち一般人はTDIを持っていないので、これと同じ方法は取れません。
そこでエジソンの発明した習慣が、現代の私たちにとっても有用となるのではないでしょうか?
鉄球じゃなくていいですから、ボールなり本なりを手に持って、問題となるテーマについて考えを巡らしながら入眠します。
しばらく後、床をドスンと叩く物音で目が覚めたとき、あなたは思いも寄らないアイデアを手にしているかもしれません。
実はこうした仮眠方法は、あの世界最高のアニメーション映画監督である宮崎駿さんも実践しています。
『ポニョはこうして生まれた。〜宮崎駿の思考過程〜』というドキュメンタリー作品では、創作に行き詰まった宮崎さんが度々アトリエを抜け出して、仮眠を取りに行く姿が映し出されていました。
氏いわく、10〜15分寝て起きた後に突破口を切り拓くいいアイデアがよく思い浮かぶのだという。
ジブリの傑作の中には、宮崎さんがヒプナゴジアからこっそり連れ帰ったキャラクターもいるのかもしれませんね。
今回の入眠期と創造性に関するテーマには、他にも類似研究の報告があり、研究者も注目している問題であることが伺えます。
ただ、これは睡眠不足が良いと言っているわけではないので、注意しましょう。睡眠不足はそもそも脳の機能や創造性が低下した状態です。
睡眠不足についての注意を追加しました。