優しさによる「お付き合い」もダイエット成功を阻む
社会的支援(ソーシャル・サポート)とは、「社会的関係の中でやりとりされる支援」のことです。
一般的に社会的支援は、その存在により直接的に、または外的ストレス要因に対するクッション材として間接的に、個人に有益な影響を及ぼすと考えられています。
しかし、社会的支援のすべてが有益ではないことをを指摘する研究も増えています。
例えばこれまでには、社会ネットワークが過剰飲酒などの不健康な行動を促進すること、家族が病気の影響を小さく見積もって助けを求めるのが遅れること、家族やパートナーが依存性を促進することなどが指摘されきました。
体重管理においても、社会的支援はより否定的な影響を及ぼす可能性があることが示されています。
例えば、肥満治療手術後の患者の体験談からは、友人や家族が差別的な態度を示したり、偏見を押し付けたりするケースの報告がいくつも存在します。ダイエットを試みる人へのサポートが、必ずしも肯定的なものばかりではないことが明らかになってきているのです。
サリー大学の健康心理学教授であるジェーン・オグデン氏らは、体重管理と社会的支援に関する文献をレビューし、ダイエットをしようとする人にネガティブな影響を与える支援について調査しました。そしてこれらを、「サボタージュ(Sabotage、妨害行為)」、「共謀(Collusion)」、そしてサボタージュの一部としての「フィーダー(Feeder)」という3つに分類し、その関係を整理しました。
サボタージュとは、「個人の健康目標を損なうように設計された、積極的かつ意図的な、ネガティブな社会的支援の形態」です。
たとえば、ダイエット食購入に余計にかかるコストを問題視したり、おいしくないと否定したりして、より健康的な食事に切り替えることを思いとどまらせる行為を指します。
サボタージュの一形態に「フィーダー行為」があります。
これは、空腹でもなく食べたいとも言っていないのに、他者に明確に過剰に食べさせる行為のことです。
相手を傷つける意図ではなく、「食べ物が無駄になるのを防ぎたい」や「愛する人に好きな甘いお菓子を食べさせたい」といった気持ちから、行われます。
一方、共謀は、「対立を避けたいという欲求が反映された、より受動的で穏やかな、ネガティブな社会的支援の形態」と定義されています。
例えば、ダイエット中の人が、「ああ、今日は走る気になれない…」と言った場合、「それなら、ソファでまったりネトフリでも見ようよ!」などと提案する行為がこれに当たります。
この行為は、相手への気遣いや、その場を円滑に進めたいという理由から行われることが多いのですが、結果的には相手の目標達成を阻むことにつながります。
家族や友人が、ダイエット目標に反する行動に「付き合ってくれる」ことで、失敗に向かう旅の伴走者になってしまうというわけです。