提供された多くの臓器が時間切れで廃棄されている
現在の臓器移植において最大の障害は、摘出された臓器の保存期間の短さにあります。
持ち主の体から摘出された臓器が体外で保存できるのは、心臓と肺ならば6~8時間、肝臓は12時間、膵臓で18時間、腎臓で36時間までになっています。
そのため、せっかく臓器が提供されても、多くが届けられる前に時間切れを迎えてしまいます。
たとえば制限時間が厳しい心臓と肺では提供されたうちの60%、長い腎臓でも20%が届けられる前に期限が切れて、廃棄されてしまいます。
そのため古くから、提供された臓器を冷凍保存する方法が調べられてきました。
受精卵や精子などは機能を保ったまま凍結保存できるため、同じことが臓器にも可能になれば、臓器不足の問題は大きく改善するはずです。
しかし残念なことに、凍結保存された臓器を移植に使う試みは、最終的に全て失敗に終わりました。
それも凍結時ではなく、むしろ「解凍時に生じる氷」が最大の壁になっていたのです。