摘出した臓器をガラス化し100日後に解凍して移植することに成功!
摘出した臓器をガラス化し100日後に解凍して移植することに成功! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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摘出した臓器をガラス化し100日後に解凍して移植することに成功!

2023.07.01 Saturday

臓器移植に革命が起こるかもしれません。

米国のミネソタ大学(UMN)で行われた研究により、ラットの腎臓全体を100日間凍結保存した後に解凍し、別のラットに移植することに成功しました。

移植された腎臓はラットの中で正常に機能しており、ラットは普通に生活することができました。

臓器全体の機能を保ったまま「摘出➔凍結➔保存➔解凍➔移植」と全ての流れを完璧に成功させたのは、今回の研究が世界ではじめてとなります。

研究者たちは臓器全体を安全に凍結保存できるようになれば、臓器移植の分野に革命的な変化が起こり、多くの人々を救えると述べています。

しかしこれまで行われてきた類似の試みは全て失敗しているのに、なぜ今回は成功できたのでしょうか?

研究内容の詳細は2023年6月9日に『Nature Communications』にて公開されました。

Researchers perform first successful transplant of functional cryopreserved rat kidney https://twin-cities.umn.edu/news-events/first-successful-transplant-functional-cryopreserved-rat-kidney
Vitrification and nanowarming enable long-term organ cryopreservation and life-sustaining kidney transplantation in a rat model https://www.nature.com/articles/s41467-023-38824-8

提供された多くの臓器が時間切れで廃棄されている

提供された多くの臓器が時間切れで廃棄されている
提供された多くの臓器が時間切れで廃棄されている / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

現在の臓器移植において最大の障害は、摘出された臓器の保存期間の短さにあります。

持ち主の体から摘出された臓器が体外で保存できるのは、心臓と肺ならば6~8時間、肝臓は12時間、膵臓で18時間、腎臓で36時間までになっています。

そのため、せっかく臓器が提供されても、多くが届けられる前に時間切れを迎えてしまいます。

たとえば制限時間が厳しい心臓と肺では提供されたうちの60%、長い腎臓でも20%が届けられる前に期限が切れて、廃棄されてしまいます。

そのため古くから、提供された臓器を冷凍保存する方法が調べられてきました。

受精卵や精子などは機能を保ったまま凍結保存できるため、同じことが臓器にも可能になれば、臓器不足の問題は大きく改善するはずです。

しかし残念なことに、凍結保存された臓器を移植に使う試みは、最終的に全て失敗に終わりました。

最大の障壁となっていたのは「の結晶()」です。

それも凍結時ではなく、むしろ「解凍時に生じる氷」が最大の壁になっていたのです。

次ページ凍結と解凍の両方で臓器を台無しにする氷ができる

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