「赤ちゃん言葉」で言語学習の上達が早まる?
母イルカが「赤ちゃん言葉」を使う正確な理由は定かでありませんが、研究者らは「子供の注意力を高めて、発音や会話の学習向上を促しているのではないか」と考えています。
1980年代の研究では、ヒトの幼児は大人の平常時の声に比べて、音域が広く高い音声により注意を払うことが指摘されていました。
また「赤ちゃん言葉」を使う動物は報告例が少ないものの、他にもいくつか知られています。
例えば、アカゲザルの母親は、同じように子供の注意を引きつけるために鳴き声のピッチを高くする傾向があります。
また鳥類のキンカチョウもヒナに声をかけるときに音程を高くしたり、鳴き声を遅くすることが知られています。
これらを踏まえると、イルカの「赤ちゃん言葉」にも子供の注意力を高めて、発声学習を促す効果があることが予想されます。
本研究には参加していない米ジョージタウン大学(Georgetown University)の海洋生物学者で、イルカの生態に詳しいジャネット・マン(Janet Mann)氏もこの仮説に同意しています。
「子イルカにとって『ああ、ママは今ボクに話しかけているんだ』と知ることは、単に母イルカが自分の存在を他の仲間に知らせるのとは違って、本当に重要なことなのです」
つまり、母親が「ボク」にこそ話しかけていると思うことで、発声への注意力がより高まり、言語能力の上達も早まるのかもしれません。