現代型のピザはいつ、どこで生まれた?
まず、ピザの土台となる平たいなパン生地の起源は約1万4500年前のヨルダンにまで遡ります。
かつてこの地にあった狩猟採集社会のナトゥーフ文化の遺跡から炭化した平たいパン生地が見つかっているのです。
このパン生地は野生の大麦やオート麦を粉にし、水と混ぜてから熱い石の上や簡易オーブンで焼いたことが分かっています。
これと同じ平たいパンは古代エジプトやメソポタミア文明でも確認されており、ピザ生地の原型はかなり古くから存在したようです。
それから平たいパン生地に具材をのせる文化が根付いたのは、紀元前4世紀半ばの古代ギリシアと考えられています。
詩人のアルケストラトスが残した詩集『へディパテイア(Hedypatheia =贅沢な生活)』の中に、平たいパンにハーブ、たまねぎ、ニンニクなどをのせた「ピラコウス(plakous)」という料理の記述が見られるのです。
ここで現代型のピザの形にぐっと近づいたと思われます。
この習慣がのちにイタリアに伝わって食べられるようになったのが、今回見つかったフレスコ画の料理だったのでしょう。
ちなみに「ピザ(pizza)」という言葉は、ラテン語で「平らなパン」や「焼いた生地」を意味する「ピンサ(pinsa)」に由来しており、その言葉が初めて文献に登場するのは10世紀後半の南イタリアです。
そしてピザは16世紀にスペイン人が新大陸からトマトを持ち帰ったことがきっかけで、劇的な進化を遂げます。
主に南イタリアのナポリでトマトの栽培が始まり、さらに水牛の乳を原料にしたモッツァレラチーズが発明されたことで、現代型のピザがついに産声を上げたのです。
それ以後は、丸い生地にトマトソースとチーズに様々な具材をトッピングしたピザが基本型として世界に広まっていきました。
余談ですが、ナポリピッツァの代表である「マルゲリータ」は、イタリアの王妃マルゲリータ(1851〜1926)にちなんで命名されたものです。
当時ピザは下町の味として庶民を中心に愛されていましたが、王妃は貴族食よりも庶民が食べるピザをこよなく愛していたという。
その中でも、トマトソースの上にモッツァレラチーズとバジルの葉をのせたシンプルなピザを好んでいました。
それが理由で、このレシピが「マルゲリータ」の名で呼ばれるようになったのです。
日本でもピザは大人気であり、11月20日は世界的に「ピザの日」となっていますが、この日付も王妃マルゲリータの誕生日にちなんでいます。