記号は文字とイメージの情報を持つ
今回の研究結果は、記号が単語よりも記憶されやすく、簡単に思い出すことができることを示しました。
論文では、画像とは異なり、記号が文字よりも記憶に残りやすい理由として、文字だけでなく、具体的な視覚的イメージも持つことと、独自の形状を持っていることで区別しやすいことの2つの可能性があると述べられています。
画像は文字と視覚的イメージを持ち、単語より記憶効率が良いことは前述しましたが、画像は時に具体的でないイメージを伝達し、抽象的な概念を表すことがあります。
この時に画像は視覚的イメージを強く伝達しますが、文字の情報が欠けてしまう、あるいは一義に定まらない場合があるかもしれません。
たとえば下記の画像は何を意味するでしょうか。
筆者はこれを「女性の後ろ姿」という意味で捉えましたが、人によっては「山を撮った写真」「荒野の写真」など異なる情報を感じ取る可能性があります。
このように画像は複数の情報を含むため、一義の意味を与えたり、文字情報を保持させることが難しくなります。
対して、記号は「dollar – $」のように、一義の文字が対応する関係性を持っています。
この記号と文字の関係性は、記号を見たときに、一義的な文字と具体的な視覚的イメージをもたらし、記憶効率が高めると考えられます。
さらに記号は単語と比較して、より独自の形を持ち、単体で意味を成すため、記憶に残りやすいと考えられます。
例えば単語の「dollar」は、単語では6つの文字が必要なところを、記号の場合は「$」の1文字で済み、別の記号と混同することなく表すことができます。
そのため、記憶容量が小さく、文字に比べて認知的な負荷が少ない可能性が考えられます。
研究チームは「記号は単純な形状で構成されており、色を必要としないため、効率的な情報伝達手段として機能している」と述べています。