知的障害や自閉症が安楽死の理由にされている
発見された39人のうち19人は知的障害を有し、24人は自閉症であり、4人は両方を患っていました。
一般的な安楽死では61%が、がん患者である一方、この39人のなかでがんに罹患していた人はわずか3人でした。
さらにこの39人で高齢者は少数派であり、18人が50歳未満と他の安楽死に比べて年齢層が若くなっていました(※5人は30歳未満でした)。
この結果は、知的障害や自閉症を理由にした安楽死が、他の安楽死にくらべてかなり異質である可能性を示唆しています。
また安楽死を求める理由を調べると、3分の2の患者たちが自らの知的障害や自閉症が「主要な原因」であると答えていました。
(※8人(21%)は障害が唯一の原因であると答えました)
また「耐えがたい苦痛」の内訳として孤独(77%)、他者への依存(62%)、立ち直る力や対応能力の欠如(56%)、変化に対応できない(44%)など社会関係にかんする問題が多く含まれていました。
知的障害や自閉症の患者たちは知能の低さや他人の考えや感情を読み取る能力の低さのために、しばしば社会関係を円滑に進めるのが困難になることが知られています。
たとえば20代の自閉症男性(仮称:サム)の記録には「サムは幼少期から不幸を感じており、他人と違うことが理由で執拗ないじめを受けていた」と記されていました。
サムは自閉症であっても人との社会的な接触を望んでいましたが、残念なことに他人とのつながりを得ることはできませんでした。
このことがサムの孤独感をさらに強める結果となりました。
そしてサムは自閉症は彼にとって耐えがたい苦痛であり、このようにして何年も生き続けなければならないという見通しは忌まわしく、最終的に安楽死を選択しました。
そしてサムの担当となった医師は、サムの「他人とつながれない孤独感」は彼の自閉症という特性からくるものであり、たとえサムがまだ20代といえ、将来にわたって「改善する見込みがない」と判断。
サムは希望通り安楽死することになりました。
また30代の境界性パーソナリティー障害を患う30代の自閉症女性(仮称:マリー)は治療のための支援付き住居に住むことが提案されていました。
しかしマリーは安楽死を望み、医師たちもマリーが人間関係を維持できず、他人との接触が「難しすぎる」と判断。
さらに医師たちはマリーの年齢を考慮しても生涯にわたって状況が改善しないと結論し、マリーの希望通り安楽死が行われました。
また別の知的障害者の男性(仮称:ボブ)の報告書には「ボブは知能が低く反省する能力も欠如している」と書かれており、今後それらが改善する見込みがないとされ、安楽死がなされました。
調査ではサム、マリー、ボブと同じように、知的障害や自閉症の3分の1のケースでは治療不可能とされ安楽死が行われていたことがわかりました。