万策尽きた人工衛星の最後の手段
チームはこの技術を「リチウムイオン電池を爆発させて衛星の軌道を変える」という意味合いから「リチウムイオンバッテリー・ディオービター (Lithium Ion Battery DeOrbiter:LiBDO) 」 と名づけています。
LiBDOは、新たに開発して搭載すべき外部ハードウェアを必要としません。
電池を爆発させるには、すでに搭載されているヒーター装置で170℃以上に過熱し、熱暴走に導けばよいのです。
チームが電池の爆発からどれくらいの推力が得られるかテストしたところ、電池1個が爆発することで約29.3N(ニュートン)の推力が得られることが分かりました。
地上で1キロの物を持つと9.8Nの力が加わるので、29.3Nは大した力ではないように思われますが、NASAのジョセフ・ネマニック(Joseph Nemanick)氏は、新空中では衛星の軌道を変えるのに十分であると指摘します。
チームの試算では、電池1個の爆発で衛星の軌道離脱時間を最大55%短縮できると算出されました。
爆破させる電池の数を増やすことで、さらに大きな推力が得られるかもしれません。
それからチームは、電池の爆発自体によって生じるデブリは約50グラムと最小限に留められることも確認しました。
この量は運用中の人工衛星にぶつかっても支障のないレベルであり、加えて、軌道からもすぐに外れてしまうと考えられています。
LiBDOがいつ実用化されるのかはまだ発表されていませんが、この技術は万策尽きた人工衛星の”最後の推力”として役立つはずです。