大空を悠然とは飛べないが、森林での小回りは利いた?
前肢だけでなく後肢にも翼がある姿は、想像するだけでも確かにカッコいいです。
しかし専門家は、翼が2枚の鳥に比べて、明らかに飛行スピードは遅く、エネルギー効率も悪かっただろうという。
そもそも翼を増やすということは、それだけ空気抵抗や重量が増えることを意味し、余分なエネルギーが必要となります。
鳥の進化において4枚式の翼が得策でなかったのは、現在の空を見れば一目瞭然でしょう。
左右2枚の翼に加えて、両脚にも翼を生やしている鳥はどこにも見当たりません。
その一方で考古学者たちは、4枚翼は狭苦しい森の中での飛翔においては有用だった可能性があると指摘します。
これまでの研究では、ミクロラプトルが4枚の翼でどのように飛行したのかが大きな争点となっていました。
初期の主張では、複葉機(左右にそれぞれ2枚以上の主翼を備えた航空機)のように、前後4枚の翼を水平に広げて使用したのではないかとの説があります。
しかし化石標本の股関節を調べてみると、そのように両脚を開くことは困難だったことが分かりました。
そこで現在の定説では、メインとなる前翼を体を浮かすために使用し、両脚に生えた後翼を体勢のコントロールに使ったのだろうと考えられています。
そうすれば、旋回速度は3倍になり、旋回半径は40%も小さくできるという。
すると木々が鬱蒼と集まる狭いスペースで、より小回りの利く飛行が実現できたのではないかと推測されています。
なのでおそらく、ミクロラプトルの4枚翼は現代の鳥のように大空を悠然と飛ぶためのものではなく、モモンガのように木から木へ飛び移るときのグライダーのように機能したのでしょう。
しかしミクロラプトルの4枚翼は、生物進化の観点からすると成功例と言えるものではありませんでした。
空を飛ぼうにも2枚翼の鳥には敵いませんし、地上を走るにしても両脚に生えた翼がジャマをしたと指摘されています。
木をつかんだり、登ったりするときも事情は同じです。
そのため、彼らが雑食だったのは、どの環境にいる獲物の狩りにも優れていたからというより、とりあえず目の前にいて捕まえられそうなヤツを必死こいて食べていたからなのかもしれません。
結局、程なくしてミクロラプトルは地球上から姿を消しています。