実は魚には「ヒ素」が含まれている
魚は古くから日本人に愛されてきた食材であり、今なお私たちの食卓に欠かせない存在です。
その一方で魚には「ヒ素(As)」という元素が多く含まれていることが分かっています。
ヒ素と聞くと、かなり危険な毒物というイメージを受けますが、実際は自然環境中に広く存在しているありふれた元素です。
特に動植物は水や土を介して体内に取り込んでいるので、私たちが口にする農畜水産物もヒ素を含有しています。
ヒ素には主に、炭素を含む「有機ヒ素」と炭素を含まない「無機ヒ素」があり、人体への悪影響がより強いのは後者の無機ヒ素です。
無機ヒ素が一度に、あるいは短期間で大量に体内に入った場合は、発熱・下痢・嘔吐・脱毛などの症状があらわれます。
これに比べると、有機ヒ素は人体への悪影響が小さいとされており、魚に含まれるのもこちらの有機ヒ素と考えられています。
とはいえ有機ヒ素が人体に完全に無害なわけではないため、どの程度有害な影響を持つかという点には議論があります。
近年の研究では、有機ヒ素が血管内皮細胞に障害を与えることで、高血圧を引き起こす原因となることが報告されています。
この事実を考慮すると、魚を頻繁に食べることで有機ヒ素が体内に蓄積されれば、高血圧の原因となるかもしれません。
ただ、高い頻度の魚食が本当に高血圧に寄与しているかは不明ですし、またどれくらいの頻度で魚を食べると高血圧になるのかも分かっていませんでした。
そこで研究チームは今回、日本人を対象に、魚の摂取頻度・血液中のヒ素濃度・高血圧の有病率との関連性を調べることにしたのです。