身近に潜む搾取の連鎖
まずは搾取の連鎖のわかりやすい実例からお話していきましょう。
マルチ商法やネットワークビジネスはこの「搾取の連鎖」の心理を巧みに利用したものだと言えます。
これらは会員になって商品を売買し、その利益や新規会員の紹介料を得るものですが、最初は年会費や商品の仕入れ代金を払わなければなりません。
そのマイナスを少しでもプラスにしようと躍起になって商品をすすめたり、会員になるよう勧誘したりする行為は、まさに搾取されたものを搾取することで取り戻そうとする連鎖です。
また最近よく聞く情報商材詐欺も似たような手口です。
「簡単に儲かる」と言ったうたい文句につられ情報商材を買ってしまったはいいものの、中身はその情報商材を売ることで儲けるという内容になっています。
情報商材を買った人は「払ったお金を無駄にしたくない」「損したくない」という思いからその情報商材が簡単に儲かるものではないと知りながら全く関係ない第三者に売ろうとします。
搾取される側から搾取する側にまわろうとする、まさに「搾取の連鎖」です。
このような搾取の連鎖は人間の自然な心理として漠然と認知されていたものの、これまで定量的に評価されたことがありませんでした。
しかし、筑波大学の梅谷氏らが行った実験により、搾取された人は全く関係のない第三者から搾取しようとし、奪われたのと同程度のものを奪おうとすることが明らかになったのです。