搾取の連鎖に関する実験
筑波大学の梅本氏らは、被験者をABCの3つの役割に分けて実験を行いました。
- A:Bから奪うことができる人
- B:Aから奪われ、Cから奪うことができる人
- C:Bから奪われる人
まずABCに資金として100円が渡されます。
次に、AがBから資金を奪い、資金を奪われたBがCから資金をどれくらい搾取するかが調査されたのです。
このとき、BにとってAは憎むべき「搾取した」人間ですが、Cは利害のない全くの第三者と言えます。
しかし、Aから奪われたものを奪い返せないBは、Cから奪われた分を奪いました。
AB間の搾取が、全く関係のないCに連鎖したのです。
この研究はPLOS ONEに2023年7月25日付けで掲載されています。
「奪う」量は「与える」量より大きい
実験においてAが奪う金額は100円(全額)、50円(半額)、0円(奪わない)から選ばれ、それぞれの金額で、BがCから奪う金額はAから奪われた金額と一致していました。
しかし、これと過去に同様の実験が「奪う」のではなく「与える」として行われたとき、BがCにおすそ分けする金額はAから受け取った金額よりも少ないものになったといいます。
つまり、おすそ分けのようなポジティブな連鎖よりも、奪われた人が他者から損を補填しようとする搾取の連鎖の方が、連鎖の関係性が強いのです。
Aの奪い方が「故意かどうか」は無関係
なお、今回の実験ではAが奪う金額について、「A自身が自分の意志で決める」ケースと「ルーレットで強制的に決まる」ケースが用意されていました。
この事実はBにも認識されます。つまりここで確認したいのは搾取に悪意が存在するかどうかで搾取の連鎖に変化が起きるかを見ることです。
A自身が意思を持って奪うか、ルーレットの結果で仕方なく奪うかでは、Bの心証は変わるだろうと予想されます。しかしBがCから奪う金額はこれらとは全く無関係でした。
これは、搾取に意思(悪意)があるかは搾取される側には関係ないということを示しています。
搾取の連鎖は、前述したマルチ商法のように悪意のある搾取だけでなく、法的に払わなければいけないお金についても言えるということです。
ここから、誰もが支払っている「税金」について考えてみましょう。