同じ現象は「好きな有名人」に対しても起こる?
これと同じ傾向は架空のキャラクターだけでなく、実在するが面識のない有名人やインフルエンサーに対しても当てはまる可能性があります。
個人的に会ったことのない人に親しみや友情を感じる心理状況を「パラソーシャル関係(Parasocial interaction)」と呼びます。
これは異常心理ではなく、誰にでも見られる健全な心の働きです。
例えば、普段からよく見ているライブ配信者やユーチューバーに強い親近感を覚えることはないでしょうか。
また決まって見るテレビ番組のMCの女性が、親戚のおばさんのように親しく感じられることはないでしょうか。
アメリカの掲示板サイトRedditでは、今回の研究結果を見たユーザーがこんな話をしています。
「私には50歳でひとり暮らしをしている友人がいますが、彼は贔屓にしているミュージシャンをファーストネームで呼び、成功したときには”自分のことのように誇らしく感じる”と語っていました」
彼が特別なのではなく、同じことを経験している人は多いはずです。
自分が応援しているアイドルやアスリートが悪く言われると、実際の友人を庇うように激しく反論したり、怒りを覚えることもあるしょう。
ただ心理学者の中には、パラソーシャル関係が過剰になるすぎるとストーカー行為に走らせる危険性があるとする意見もあります。
例えばアイドルなり配信者なりを対象に「〇〇を幸せにできるのは自分だけ」「〇〇のことを一番理解しているのは自分だ」というような心理を抱くのは、過剰なパラソーシャル関係が原因であり、架空と現実の人間関係の境界が曖昧になった結果だと言えるでしょう。
ストーカーにまで話を拡張すると、悪い印象が強調されてしまいますが、孤独な人の方がコンテンツに入り込んで楽しめるということかもしれません。
また最近、ゲーム配信が友達と遊んでいるような感覚がして楽しいとハマる人が多い裏には、こうした社会的な孤立感が広まっている可能性もあるでしょう。
バーチャルと現実の境界は、孤独感が強い人ほど脳内で曖昧になってしまうのです。