磁気フィールドで反物質を保持し自由落下を計測する
調査にあたってはまず、電子の反物質である陽電子と陽子(水素の原子核)の反物質である反陽子が作成され、結合させることで反水素が作られました。
技術の進歩によって、現在では反水素の補足と蓄積は日常的に行えるようになっており、CERNの反水素レーザー物理学装置(ALPHA)では、最大数千個に及ぶ反水素原子が保管できるようになっています。
保管容器は縦長のシリンダーとなっており、内部に強力な磁気を展開することで、反水素が(物質で構成される)シリンダーの壁と接触することを防いでいます。
研究者たちはこのシリンダーに磁気調節機能を追加した、上の図のようなシリンダーを開発しました。
このシリンダーはも磁気の力で反水素をトラップしています。
磁気が強い間は、反水素は上下に展開される磁気フィールドに跳ね返されて上下の空間に出ることはできません。
しかし磁気を緩めていくと、磁気フィールドを突破できる反水素があらわれはじめます。
このとき、もし反水素が重力に引かれる性質があるなら、反水素が磁気フィールドを突破する数は、上側よりも下側のほうが多くなるはずです。
結果、上の動画のように、反水素の磁気フィールドの突破は下側が上側の5倍多くなっていることが明らかになりました。
つまり上側から20個の反水素が飛び出す間に、下側からは80個以上の反水素が飛び出していたのです。
またこの比率をもとに反水素が受けている重力加速度(g)を計算したところ0.75±0.29(g)であり、地球上の物体に働く重力加速度1gと誤差の範囲で一致しました。
この結果は、少なくとも反物質には重力に押される反重力性はなく、通常の物質と同様に重力に引かれる性質を持つことを示しています。
研究者たちは今後、装置の精度を向上させ今の100倍の正確さを目指していくとのこと。