未来の観測結果が過去の観測結果を変えてしまう
たとえば一方が右回転ならば他方は左回転という、量子もつれにある2つの粒子Aと粒子Bが用意され「粒子A」だけを友達に送ったとします。
そして手元に残った「粒子B」に対して、量子もつれを破壊しない程度の、弱い測定を行います。
すると粒子Bに関して、回転方向を示すいくつかの観測結果が得られます。
(※なおここでは粒子Bは左回りの可能性が高いとします)
また観測の方法は何通りも存在しており、ときには9割9分の確率で粒子Bが左回りという結果が得られることもあります。
こうなると(当然ながら)友人に送られた粒子Aは、右回りの可能性が高くなります。
通常のギャンブルならば、この1度目の観測で「ほぼ確定」と判断し、お金を賭ける人もいるでしょう。
しかし粒子Bが自分の手元にあるなら、この結果を覆すことが可能です。
粒子Bが左回転である証拠が数多く得られていても、量子もつれが破壊されておらず、まだ宇宙にはどちらが右回転か左回転かの情報は存在していないからです。
そのため、ある意味でインチキのような手法が可能になります。
1度目の観測が終了した後、粒子Bの観測から得られた情報などをもとに、絶対に粒子Bが右回転という「1度目と逆の結果」しか得られない観測装置を作成し、2回目の観測を行うのです。
2回目の観測が1度目の観測と違うのは、2回目の観測が量子もつれを破壊するのに十分な威力を持っている点にあります。
そのため事前に9割9分左回転という結果を得ていても、この八百長まがいの装置を通して観測された粒子Bは必ず右回転になってしまいます。
すると友達の元では、粒子Aが左回転として生成され、確定することになります。
つまり2回目(未来)に行った観測が、1回目(過去)に行った観測の結果を変えてしまったのです。
1回目の過去に行った観測がどんなに精度が高くても、2回目の未来に行った観測を恣意的に行うことで、最終的な結果をコントロールできるのです。
宇宙に情報が出現する前の観測結果は、どんなに奇妙でも、因果律を脅かす存在にはなりません。
そのため、理屈の上では因果律は崩れずに済みます。
この実験結果は量子力学の中でも特に直感に反する現象として考えられています。