概日リズムはどんな働きをしている?
地球上のあらゆる生物は、約24時間周期で時を刻む「概日リズム」を持っています。
概日リズムは「体内時計」とも呼ばれ、昼夜の明暗サイクルや温度を含む環境変化の予測、特定の時刻に生理機能を最大化させるなど、心と体の健康にとって絶対に欠かせません。
私たち哺乳類において概日リズムを作り出しているのは「時計遺伝子」であると考えられています。
具体的には、細胞内にある時計遺伝子の発現と、その遺伝子から作られるタンパク質の合成および分解のサイクルによって概日リズムが生成されるという。
さらにその24時間周期のリズムを制御しているのは、脳の深部にある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という神経細胞の集団です。
これは睡眠覚醒サイクルや体温リズム、ホルモン分泌など、全身のあらゆる生理機能の概日リズムを調節しています。
加えて、概日リズムは、自ら時を刻む「自律振動性」、周囲の環境に合わせる「同調性」、温度が変わってもリズム周期を変えない「温度補償性」の3つの重要な機能を持つとされています。
概日リズムは「冬眠中」でも動いたままなのか
私たち哺乳類は体温を常に一定に保つ「恒温動物」です。
だいたい37℃前後に維持し、わずか数℃の変化でも生理機能に支障が出るので、低体温が長く続くと細胞にダメージを負ってしまいます。
一方で食物が不足する真冬の季節には、クマやシマリスなど「冬眠」をする哺乳類がいます。
冬眠に入ると体の熱生産や代謝が抑制された状態となり、体温も環境温度の近くまで低下するのです。
しかし研究者らはこれまで「体温が極端に低下した冬眠中の哺乳類において、概日リズムはそのまま時を刻んでいるのか、それともリズムが変わっているのか」という大きな疑問を抱いていました。
これは過去数十年にわたり研究されていますが、いまだ決着がついていません。
そこで研究チームは、概日リズムが時を刻む様子を温度を変えながら長期間にわたってリアルタイムに観察してみました。