宇宙は「星の生死」を使って錬金術を行っている
中世の錬金術では、さまざまな材料を反応させることで、鉄や鉛などの金属から金を生成することが目指されていました。
しかし現代技術の観点からすれば、錬金術の試みを成功させるには「元素を変換」させる技術がなければなりません。
つまり、鉄や鉛を構成する鉄原子や鉛原子の原子核そのものを金原子に変換する必要があるわけです。
これまでの研究によって、重元素の新たな生成には莫大なエネルギーが必要であるため、自然な惑星環境下で発生しえないことが明らかになっています。
地球内部の高温高圧ができるのも、せいぜい炭素を固めてダイヤにする程度であり、炭素を別の元素に変えるまでには至りません。
では、地球に存在する重元素たちはどこから来たのでしょうか?
その答えの1つは太陽のような恒星の核融合です。
太陽は核融合によってエネルギーを生成し、暗黒の宇宙に輝きを放っています。
このプロセスを簡単に言えば「2つの水素が核融合を起こして1つのヘリウムになる過程」と言えます。
また星が老化して燃料となる水素が枯渇してくると、次に「ヘリウムが核融合する」段階に入り、ベリリウムや炭素、酸素など、より重たい元素が生成されるようになります。
しかし星内部の核融合で作られる元素は鉄までとなっています。
鉄より軽い元素の核融合ではエネルギーが「放出」されます。太陽はこのエネルギーで輝いています。しかし鉄より重い元素を核融合させようとすると、周りからエネルギーを「注入」しなければならないからです。
つまり星が生きている間には、上の図の赤で囲った元素までしか生成されないのです。
この事実は、私たちの身の回りにある金やプラチナのような重元素は、ここまで説明した以外の「錬金術」によって作られたものであることを示しています。
そしてこの先のプロセスは、太陽よりも遥かに重い星の死が関わってきます。