お酒に弱くても飲酒量を増加させる遺伝子があった!
チームは今回、日本分子疫学コンソーシアム(J-CGE))やバイオバンク・ジャパンなどから収集した日本人集団17万5672人を対象にゲノム分析を行いました。
具体的には、ALDH2の遺伝子変異との組み合わせによって、各人の飲酒行動に影響を与える別の遺伝的要因を探っています。
その結果、7つの遺伝子領域にみられた遺伝的要因が、ALDH2の遺伝子変異と組み合わさることで飲酒行動に影響を与えることが突き止められました。
例えば、下図の上から5番目に当たる「ALDH1A1 rs8187929」という遺伝子を見てましょう。
これはALDH1A1遺伝子において、1つの塩基がTからAに変化する一塩基多型(SNP)です。
これをお酒に強いGG型に人とお酒に弱いGA型の人で比べてみます(図の上から5番目)。
すると、GA型はこの遺伝子変異をもっていても飲酒量は変わらないのに対し、GA型の人ではこの遺伝子変異があると飲酒量が大幅に増加していたのです。
つまり、ALDH2の遺伝的な違いではお酒に弱いタイプの人でも、別の遺伝的要因と組み合わさることでたくさんのお酒を飲んでしまうと考えられます。
また反対に、ある遺伝的要因をもっていると、飲酒量がさらに低下する遺伝子変異も見られました(図の青色)。
さらにチームは、ここで見つかった7つの遺伝子の中に、ALDH2の遺伝子変異との組み合わせによって、飲酒に関連する「食道がん」のリスクを高めるものがあることも特定しています。
例えば、お酒に弱いGA型の人が「ADH1B rs122994」という遺伝子において塩基TがCに変わっていると、それをもっていない人に比べて、食道がんの発症リスクが3.77倍になっていました(下図の上から3番目)。
このように、別々の遺伝的要因が組み合わさることで、単独での効果とは異なる効果を生み出すことを「交互作用」といいます。
チームは飲酒における交互作用を詳しく理解することで、個々人の遺伝的特徴に合ったベストな予防策が立てられるようになると述べました。
お酒に弱いのにガンガン飲んでしまう人は、こうした遺伝子の交互作用をもろに受けていると考えられます。