家庭でも火力発電所でも厄介な「水垢」
電気ケトルなどに付着する「水垢」は、石灰(炭酸カルシウム)が堆積したものであり、「石灰鱗」や「ライムスケール」などと呼ばれます。
これを取り除くのは簡単ではなく、大抵の場合、酢や特別な除去剤を用いて堆積物を溶かします。
また同様の現象は、火力発電所などの熱交換器でも生じており、この場合は「ファウリング」と呼ばれています。
例えば、ファウリングによって熱交換器のパイプ内にわずか1mmの厚さのライムスケールが付着するだけでも、発電効率は約1.5%も低下します。
この損失を埋めわせるためには、追加で870万トンもの石炭を燃焼させる必要があるのだとか。
これらを考えると、身近な存在である「水垢」は、日常生活から工業施設に至るまで厄介な存在だと言えます。
では、それらが厄介で、なおかつ取り除くのが大変なのであれば、「そもそも表面に付着するのを防ぐ」ことはできないのでしょうか。
残念なことに、ライムスケールの付着を防ぐ研究は、これまでほとんど行われてきませんでした。
しかし今回、シュミット氏ら研究チームはこの課題に取り組み、成功を収めました。