水垢を抑制するコーティングが開発される
研究チームが開発したのは、水垢であるライムスケールの結晶(石灰質の結晶)の付着を防ぐコーティングです。
ライムスケールは、水の中に含まれる物質が表面に付着し、徐々に成長していくことで発生しますが、新しいコーティングは、物質の付着力を弱めることで、ライムスケールの成長を抑制しています。
この新しいコーティングは、ヒドロゲル(ハイドロゲルとも言う。水を内部に含む物質)を材料にしています。
そして「フォトリソグラフィ」と呼ばれる写真の現像技術を応用したパターン作製技術を用いて、コーティング対象の表面の上に、微細な凹凸構造を作るのです。
研究チームによると、「このヒドロゲルの微細構造は、汚れの付着を抑制するサメ肌(楯鱗:じゅんりん)のような自然モデルを彷彿とさせる」とのこと。
実際、対象の表面がヒドロゲルで凹凸にコーティングされると、石灰質の結晶の接触面が小さくなり、接着力が低下します。
そしてコーティング上に弱い接着力で形成された結晶は、水流によって自然と除去されることが多くなります。
もちろん、このコーティングによって水垢(ライムスケール)の形成を完全に防ぐことはできませんが、結晶が大きく成長することを抑制することはできるのです。
実験では、ヒドロゲルでコーティングした表面に水を流すと、その表面には約10μmのライムスケール結晶が成長しましたが、その結晶の98%が水流で除去されました。
このことは、新しく開発されたヒドロゲルのコーティングが、水垢の防止に非常に効果的であることを示しています。
研究チームは、ヒドロゲルには生体適合性があり、環境にやさしいことから、化学物質を使用する従来の除去方法よりも優れていることを強調しています。
そして彼らは、この技術に関して特許を申請するのではなく、科学雑誌で公開することを選びました。
これにより、すべての関係者が自由にこの技術を用いて「水垢を抑制するコーティング」を開発・利用できます。
この技術が用いられた「水垢防止コーティングの電気ケトル」が登場するのも、そう遠くはないかもしれませんね。