極地の氷が溶けて、自転速度が遅くなっている?
アグニュー氏の説明にする地球自転速度低下の仕組みは次のようなものです。
これまでの調査により、1990年代以降、地球温暖化が急速に進行していることがわかっています。
その中で、南極やグリーンランドといった極地の氷が猛烈な勢いで溶け始めているのです。
溶けた氷は極地から地球の中央部分にあたる赤道付近へと移動していきます。
すると、地球の質量の位置が中心部に集中することで自転速度がわずかながら減速に転じるのです。
アグニュー氏はこれを「フィギュアスケーターのスピン」に例えます。
フィギュアスケーターのスピンは、両腕を縮めて回転する半径を小さくすると、回転スピードが上がります。
反対に、腕を水平に広げて回転の半径を広げると、スピン速度は遅くなります。これを慣性モーメントと呼びますが、要は回転する軸に対して質量が広がっていると回転は遅くなるのです。
つまり、地球の極地にあった氷が海水となって赤道に移動すると、これと同じ現象が起こると予想されるのです。
となると自転速度が遅くなるわけですから、今まで通り、うるう秒を1秒足すという作業で大丈夫ということでしょうか?
しかしアグニュー氏によれば、氷の融解にともなう自転の減速よりも、全体としてはまだ加速の傾向の方が強いため、「加速が想定していたよりもゆっくりになるだけだ」といいます。
そのため、「負のうるう秒」を導入する計画に変わりはありません。
ただし、氷の融解によってその導入タイミングが3年ほど遅れ、2026年から2029年に移行する可能性があると同氏は指摘しています。
一方で、世界のタイムキーパーたちは、1秒の足し引きはコンピューターシステムに甚大な負担をかけるため、うるう秒の導入を2035年まで廃止する計画を立てているという。
そうすると、最後のうるう秒の導入は史上初の「負のうるう秒」で幕を閉じることになるかもしれません。