ADHD症状が起こる原因はどこにある?
これまでの研究で、ADHD症状が起こる根本原因は脳の神経学的な異常にあることが示されています。
例えば、ADHDを持つ人によく見られるのは、脳の「実行機能」に関わる領域の異常です。
実行機能とは、あるタスクを完遂するために必要な一連の脳機能であり、具体的には、注意の持続や時間の管理、感情のコントロール、ワーキングメモリ(作業記憶)の働きなどを司っています。
この領域に障害があると、「集中力の欠如」や「感情調節の困難」といったADHDに特有の症状が起こりやすくなるのです。
実際に過去の研究では、実行機能に深くかかわる前頭前野や前頭葉の神経結合が少ない人ほど、集中力が不安定で、感情の自己管理が難しく、計画の立案と実行が困難になりやすいことが判明しています(Journal of Research in Personality, 2021)。
それから、もう一つの重要な点は「ドーパミンの機能障害」です。
ドーパミンは集中力や意欲を高める働きをする脳内の神経伝達物質ですが、ADHD患者ではドーパミン分泌が非常に不安定になっていることが知られています。
例えば、自分からは進んでやりたくない作業や周囲から強制されるタスクに対してはドーパミンが分泌されないので、集中力が続かなかったり、ミスも多くなります。
しかし、自分の好きな趣味に没頭するときなどは逆にドーパミンが出過ぎてしまい、周りが声をかけても聞こえないほど、過度な集中力を発揮するのです。
「仕事ではすぐに気が散るけど、プラモデルを作っているときは寝食も忘れるほど没頭してしまう」という方もいるのではないでしょうか。
こうした脳の神経メカニズムの異常がADHD症状の発症に大きく関与しているとされています。
これを踏まえると、なぜカフェインがADHDに有効なのかも見えてきます。
カフェインは脳内のドーパミン分泌を促すので、ADHDに特有の「不安定な集中力」や「注意散漫」の抑制に役立つため、ADHDの人はコーヒーやエナジードリンクを飲んだ際の恩恵が特に大きく感じやすいのです。