メロドラマのワンシーンで、最愛の人を亡くした人が、その喪失が元でその夜のうちに死んでしまうという場面を見たことがないでしょうか?
実はそれは、フィクションの中の比喩というだけではありません。ブロークンハート・シンドロームは実際にあるんです。そして、とても低い頻度ではありますが、命に関わることもあります。
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ブロークンハート・シンドロームとは別名ストレス誘引性心筋症のことで、一般の心筋症のように心臓が弱くなります。その症状は、胸痛、息切れで、時には鼓動の変化が現れることもあります。
一般の心筋症と変わりがないので、90年台までその存在は知られていませんでした。しかし、そこには鍵となる違いがあります。
ストレス誘引性心筋症の場合、多くの心臓病とは違って動脈の閉塞がありません。
そして、レントゲンで見てみると、日本でタコを捕まえる時に使われている壺、タコツボに似た形になっています。そのため、この病気は「タコツボ心筋症」とも呼ばれています。
その形の原因は心臓が一時的に肥大したことであり、特に左心室で顕著です。左心室は心臓の4つの部位の中で最も大きくて強い部位です。
一見大きいことは良いことのように思われるかもしれません。しかしこの肥大は、心臓の組織が働かなくなることが原因でおこっています。弾力性がなくなり、弱くなるので、普段通りの力で血液を送り出すことができなくなります。
どのようにしてこの肥大化が起こるのかは、はっきりとはわかりません。最も支持されている仮説は、カテコールアミンの突然の過剰放出です。カテコールアミンはアドレナリンのようなものです。この反応は、ストレスに対する「戦うか逃げるか」の反応と呼ばれています。
カテコールアミンは筋肉の血流を増やして心拍と血圧をあげて、体が脅威に対して対処する準備をさせます。
しかし、ブロークンハート・シンドロームの場合、このカテコールアミンがなんらかの原因で過剰になり、心筋が収縮する能力を邪魔します。
通常これは、愛する人の死や、解雇、虐待のような、深い心理的な出来事やトラウマによって刺激されます。そのために、「ブロークンハート・シンドローム」と呼ばれるのです。
これは、どのような種類のストレスでも起こる可能性はあるといわれています。たとえば、鍵を忘れて家の外に締め出されるといった穏やかなものであってもです。
そしてこの出来事は悪いことに限られるわけではありません。タコツボ心筋症は幸福な瞬間の後でも起こりえます。例えば、誕生日にサプライズパーティーをしてもらったり、カジノでジャックポットを当てたりした場合などです。
ブロークンハート・シンドロームについてはわからないことはたくさんあります。しかし、一つ分かっていることは、そのほとんどが年寄りの女性におこっているということです。
なぜそうなのかは完全には分かっていません。しかし、ストレス管理を助けているエストロゲンと呼ばれるホルモンの量が下がっているという事が関係しているのかもしれません。
女性が年をとると、エストロゲンの量が下がってきます。そのせいで、ストレスのかかる出来事に対してより深く影響を受けてしまう傾向があります。その結果、ブロークンハート・シンドロームのような副作用を経験することになります。しかし、男性はエストロゲンが少なくて当然なのですが、この病気が出てくることはまれであり、このことの説明がつきません。エストロゲンはこの問題を解き明かす鍵のひとつにすぎないのです。
失恋で死んでしまうというこの話を聞いて、心配になった人もいるかもしれません。しかし、その可能性はとても低い上、生命に関わるものになると更に低くなるということを覚えておいてください。
多くの人はほんの数週間で自力で治ってしまいますし、普通お医者さんが危険にならないように見ていてくれます。ことわざで言われる通り、失恋は時間が治してくれるのです。
すくなくとも、ブロークンハート・シンドロームについては。
via: SciShow / translated & text by nazology staff