大気から水を集めて飲料水を得る方法
水不足の地域で飲料水を得るための方法は、いくつか存在します。
例えば、汚れた泥水をろ過して飲めるようにしたり、海水を真水に変えたりする技術があります。
しかし、これらの技術は、汚れているにせよ、塩が含まれているにせよ、その場にある程度の水が存在していることが前提です。
では、砂漠地帯のように、極度に乾燥し、水たまりすら存在しない地域では、どのように飲料水を得ることができるのでしょうか。
その方法の1つとして、科学者たちは以前から「空気中から水を収集するシステム」に注目してきました。
これは、空気中から水分を吸収する「吸着剤」を使用して水を集め、それを太陽やその他の熱源で加熱して水を取り出す、という方法です。
この吸着剤にはいくつかの物質が使用されますが、例えば「ゼオライト」が使用されることもあります。
ゼオライトとは、微細な孔を持つ鉱物です。
水分子とゼオライトの細孔の大きさが近いことから、ゼオライトは水分子に対する吸着力が非常に高く、湿った空気から水分子を捉えることができるのです。
しかし、ゼオライトから水を取り出すためには、どうしても加熱しなければならず、従来の太陽光を用いた方法では、効率がよくありません。
そこで今回、リー氏ら研究チームは、太陽光ではなく、排熱を利用したいと考えました。
排熱は、工業プロセスや発電所などで発生する余剰エネルギーの一種であり、通常は無駄になることがほとんどです。
工場などの建物や、輸送車両など排熱が発生する既存のインフラと水生成システムを統合することで、上図のとおり、吸着剤における吸着と脱水のサイクルを高速化できると考えられます。
ちなみに、排熱を利用することで環境負荷も軽減されるため、「持続可能な水供給システム」としての価値も高くなるでしょう。