サメ肌ってどんな形?
ホホジロザメの楯鱗の一つ一つは、3つの爪が生えたような形をしています。
真ん中が最も大きな「大突起」とされ、その左右に並ぶ2つが「小突起」です。
これらの突起はすべて、ホホジロザメの頭から尾の方向に走っており、水が流れる向きに沿っています。
それから楯鱗同士は菱形状に配置され、大突起なら大突起同士が、小突起なら小突起同士が前後に列をなすように見事に並んでいます。
なのでホホジロザメの楯鱗を正面から見ると、大突起の列と小突起の列が頭から尾に向かって伸びているように見えるのです。
サメ肌がおろし金代わりになるのも、この細かな楯鱗が並んでいるためです。
そしてこのサメ肌の微細構造は、水流の摩擦抵抗を減らすために機能していることもわかっています。
そのためサメの肌をモチーフに流体の抵抗を減らすため、わざと表面に微細構造を持たせるという生物模倣技術(バイオミメティクス)も開発されていて、これはリブレット(Riblet)と呼ばれています。
このリブレット加工は、航空機の表面から水着の表面まで様々な場面で利用されています。
2008年北京オリンピックではレーザーレーサー(LZR Racer)という全身を覆う水着を着用した水泳選手が、次々に世界記録を更新してしまい、最終的に公式大会では水着で体表面を覆う割合が制限されるという自体に陥りました。
北京オリンピックを見ていた人たちは「水着1つでそんな変わるものなの?」と驚いたかもしれませんが、このレーザーレーサーに使われていた技術がリブレット加工です。
そのためリブレットの有効性は、もはや人類には常識となっていますが、意外なことに発想の源となった「ホホジロザメの楯鱗」が、水流への抵抗に対してどの程度の低減効果を持つかの詳しい特性については調べられていないのです。
というのも、ホホジロザメは知名度の高さに反して、標本や生態データを得るのが難しく、全身の広い範囲にわたる楯鱗の構造を調べることができなかったからです。
そこでチームは今回、貴重なホホジロザメの全身標本を使って調査を行いました。