意識はあるけど体は動かない「CMD」とは?
交通事故や転落、転倒、あるいは脳血管障害や脳腫瘍などで脳を損傷すると、意識不明の重体に陥ることがあります。
こうなると患者は医師や家族の呼びかけも聞こえず、まったく反応もできません。
この状態では声をかけ続けても本人には届かないのではないかと思うでしょう。
しかしこれまでの研究で、意識不明の昏睡患者に呼びかけを行い、そのときの脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)や脳波(EEG)で測定すると、稀に呼びかけに反応する脳信号が得られるケースがありました。
この状態を専門家は「認知と運動の解離(cognitive motor dissociation:CMD)」と呼んでいます。
認知と運動の解離(以下、CMDと表記)とはその名の通り、認知能力と運動能力の結びつきが切断されている状態を指します。
つまり、外部からの呼びかけは聞こえていて、頭でも理解できているものの、それに応答して、体で表現する運動能力は沈黙しているということです。
イメージとしてCMDは「閉じ込め症候群(locked-in syndrome)」に近いと考えられます。
閉じ込め症候群の患者は、意識はあるものの、脳の機能障害により眼球運動とまばたき以外の意思表示ができない状態にあります。
意識や思考は鮮明でも、それが体の中に閉じ込められているように見えるのです。(ただCMDの場合は閉じ込め症候群ほど鮮明な意識や思考はないと考えられています)
これまでのところ、CMDについての体系的な調査はなされておらず、意識不明の患者においてどれくらいの割合で発生しているかも知られていませんでした。
そこで研究チームは今回、CMD研究における過去最大規模の調査を行いました。