赤道だけに集中したクレーターの謎
ことの発端はクレーターの奇妙なパターンが見つかったことに始まります。
実はこれまでの研究で、約4億6600万年前の古生代・オルドビス紀には、隕石の衝突が数千万年にわたり突如として急増していたことが知られていました。
隕石が惑星に落ちること自体は何も珍しいことではありません。
地球には今でも毎日のように大小さまざまな隕石が飛来しています。
ただ不可思議なのはオルドビス紀に落下した隕石の位置でした。
通常、隕石が落ちる場所はランダムであり、それは月や火星を見て、至るところにクレーターが分布していることからもわかります。
ところがオルドビス紀の隕石痕は不思議なほど赤道付近に集中していたのです。
オルドビス紀は5億年近く前のことですから、大陸の形や配置も今日とはまったく違います。
そこで研究チームは今回、あらゆる地質学的データを駆使して当時の大陸マップを再構築し、オルドビス紀の隕石群がどこに落ちていたのかを分析しました。
その結果、全部で21個のクレーターが見つかったのですが、実に興味深いことに、それらの隕石痕はすべて赤道から緯度30度以内にあったのです。
また当時の大陸は全体の70%以上がその範囲の外側にあり、赤道の緯度30度以内にあった大陸は30%以下でした。
その非常に狭い範囲に絞って、図ったかのように21個すべてのクレーターが見つかったのです。
まるで神様がダーツのブル目がけて矢を放つように、地球の赤道へ向けて隕石を放っているようでした。
この奇妙な現象をどう捉えるべきでしょうか?
まずもって「宇宙のあちこちからランダムに飛来してきた隕石が本当にたまたま赤道付近に落ちただけ」というのは到底考えられません。
しかもオルドビス紀の一時期だけ、隕石が偶然にも地球によく飛んできたというのもおかしな話です。
そこでチームは科学的に妥当性の高い考え方をしました。
それは「オルドビス紀の地球の赤道上空に何かがあった」というものです。
ではその「何か」とはなんでしょうか?
チームが最も可能性の高いものとして導き出した答えが地球のリングでした。