チョコレートの心理的作用
これまでに、チョコレートを食べることが体や心にどのような影響を与えるか、多くの研究が行われています。
Bentonらの研究では、大学生330人にアンケートを行い、チョコレートに対する感じ方として3つの要素(強い欲求、罪悪感、栄養補給)があることを発見しました。
特に、チョコレートを食べたいという強い気持ちの背景には、不安やストレスを和らげ、気分を良くしたいという期待があると考えられました。
チョコレートには実際に、気分が落ち込んだり不安を感じたりしたときに、それを軽くする効果があることが分かっています。
研究によれば、チョコレートを食べると、うつ症状や不安が和らぎ、幸福感が増し、嫌な気持ちが減ることが確認されています。
また、リンゴよりもチョコレートの方が気分改善の効果が強く、チョコレートをゆっくり味わって食べると、ポジティブな感情が増えることも分かりました。
この効果は、クラッカーでは見られませんでした。
但し、栄養的には同じでも、美味しくないチョコレートでは嫌な気持ちを和らげる効果がないことも示されています。
さらに、チョコレートのどの成分が「食べたい」という強い欲求に関わるのかを調べるため、週に1回以上チョコレートを食べたくなる大学生34名を対象にした研究もあります。
結果として、カプセルに入れたココアパウダーやホワイトチョコレートでは、食べた後の満足感は弱いことが分かりました。
特に、ホワイトチョコレートにココアパウダーを足しても、通常のチョコレートを食べたときの満足感には及ばなかったのです。
この結果から、チョコレートを食べたいと感じるのは、栄養や成分だけでなく、他の心理的な要因が関わっていることが示されています。
チョコレートには、私たちがリラックスしたいとき、あるいはストレスから解放されたいときに強い欲求を引き起こす力があります。
しかし、その作用は単純ではなく、「二相性作用」と呼ばれる、状況に応じて異なる影響を与える特性があるのです。
まず、二相性作用について説明しましょう。
これは、同じ物質や行為が異なる状況で全く違った効果をもたらす現象です。
たとえば、カフェインが含まれるコーヒーは、朝の目覚めに飲むと覚醒効果があり、集中力を高めます。
しかし、夜遅くに飲むとリラックスして心を落ち着ける効果を感じることもあるのです。
このような作用は、チョコレートでも観察されます。
たとえば、仕事中や勉強中に少量のチョコレートを食べることで集中力が高まる一方、リラックスしたいときには同じチョコレートが心を落ち着かせ、ストレスを軽減する効果を持つことがあります。