発泡スチロールを分解できる「アフリカ出身」の種を発見!
今回、調査対象となったのはアフリカ原産の甲虫・ガイマイゴミムシダマシ(学名:Alphitobius diaperinus)の幼虫であるレッサーミールワームです。
レッサーミールワームの幼虫期間は8〜10週間であり、暖かく、常に餌にありつける養鶏場などによく見られるといいます。
また本種はアフリカ出身ですが、現在では世界の多くの国にも広がっているとのことです。
チームは飼育下にあるレッサーミールワームを用いて、ポリスチレンを原材料とする発泡スチロールを分解できるかどうかを検証。
その結果、レッサーミールワームには発泡スチロールを食べて、自然分解できる能力があることが確認されました。
さらにチームはレッサーミールワームを3つのグループに分けて、それぞれの条件で発泡スチロールの消費の仕方がどう変わるかをテストしています。
1つ目は発泡スチロールのみを餌として与えた条件。
2つ目は栄養価の高い「ふすま(小麦をひいて粉にした後に残る皮)」のみを餌として与えた条件。
3つ目は発泡スチロールとふすまを混ぜて与えた条件です。
その結果、発泡スチロールとふすまを混ぜた条件では、発泡スチロールのみを与えた条件に比べて、レッサーミールワームの生存率が高く、より多くの発泡スチロールを食べていることがわかりました。
これは栄養豊富なふすまを程よく混ぜることで、レッサーミールワームの発泡スチロール分解能力がさらに高まることを示唆するものです。
さらにチームは、レッサーミールワームのプラスチック分解を可能にしている腸内細菌も明らかにすることに成功しました。
発泡スチロールを与えられたレッサーミールワームの腸内には、さまざまな化学物質を分解できる細菌として有名な「プロテオバクテリア」と「ファーミキューテス」が多く含まれることを見出したのです。
この他にも、クライベラ、ラクトコッカス、シトロバクター、クレブシエラといったプラスチックを分解できる酵素を産生する細菌が多く見られました。
つまり、発泡スチロールを自然分解しているのはレッサーミールワーム本人というよりも、レッサーミールワームの腸内に潜む細菌が作り出している酵素なのです。
しかもこれらの細菌は大規模に使用しても、昆虫や土壌環境に害を及ぼすことはありません。
そこで研究者らは、大量に廃棄された発泡スチロールを分解処理するシステムとして、これらの細菌(および細菌が作り出す酵素)を使った方法を開発したいと考えています。
要するに、レッサーミールワームがうじゃうじゃいる穴の中に発泡スチロールを捨てるといった原始的な方法ではなく、レッサーミールワームから分離した細菌を培養し、それを使ったより効率的な方法で発泡スチロールを処理するのです。
チームは今後、大規模な発泡スチロール廃棄物を安全かつ効率的に分解できるような微生物溶液の開発が可能かどうかを検討していきたいと話しています。
では最後に、発泡スチロールを分解するレッサーミールワームの実際の画像を見ておきましょう。
※ 苦手は方はここまでの閲覧にしておいてください。