繊細さん(HSP)の特性とは?
HSPとは「感受性が強く、刺激に敏感な気質を持つ人」を意味する言葉で、アメリカの心理学者エレイン・アーロン氏が1996年に提唱した心理学上の概念です。
HSPは経験や環境などの後天的な要因によるものではなく、生まれつき備わった先天的な性質であるとされています。
では、HSPに見られる主な特性とは何なのか?
まず一つ目は「周囲の刺激にとても敏感である」ことです。
例えば、人混みや騒音、明るすぎる光、味や匂いなど、あらゆる環境刺激に過敏に反応してしまいます。
人混みに入ると不安になったり、サイレンの音に心臓がドキッとなったり、照明が急に明るくなると居心地が悪くなったりと、これらはHSPが示す典型的な反応です。
また物理的な環境刺激だけでなく、他人の表情や感情にも逐一反応してしまい、相手は特に何も気にしていないのに、HSPの人は「あれ、今一瞬顔が曇ったよな。もしかして嫌われてる?」とあらぬ勘繰りをしてしまいます。
次に「他人に共感しやすい」特性があります。
HSPの人は相手の気持ちや場の空気を敏感に察知して、読み取る能力に長けており、小説やドラマを見ていても登場人物に強く感情移入しやすいです。
これはポジティブな特性ではありますが、HSPはこれが行きすぎて次のような事態にいたる可能性があります。
それは「周囲の影響を受けやすい」ことです。
HSPは、自分と他人とを線引きしておくための”心の境界線”が薄いことで知られます。
心の境界線が薄いと、相手の気持ちを配慮して深く共感できる反面、相手の言うことに過度に同調したり、容易に自分の考えを曲げて、相手に引きずられるマイナス面があります。
特に自らの意見をハキハキと断言する人の主張は正しく感じてしまい、そうした人同士の言い合いなんかを横で聞いていると、どちらの意見も正しいように思えてきて、自分の本当の気持ちを見失ってしまいかねません。
そしてこれらの特性から最終的に「疲れやすい」という性質が現れます。
環境刺激にいちいち敏感に反応していたり、相手の気持ちや考えを必要以上に読み取ろうとしていると、当然ながら心理的に追い込まれて、疲れやすくなるのです。
HSPの人はここからさらに「自己否定が強くなる」ことがあります。
繊細さんはその気遣いや優しさ、思い込みから、対人交流において相手を責めることをほとんどしませんし、逆に相手を気にするあまり、それが返って「私が悪かったのではないか」と責めの矛先を自分に向けてしまいやすいのです。
このように繊細さん(HSP)は、感度の良すぎるアンテナを常に張り巡らしているようなものであり、他人が気づかないことに敏感に反応できることもあれば、気にしすぎて心理的なストレスが大きくなることがあります。
これまでの調査によると、HSPの人口は全体の20%弱、およそ5人に1人が当てはまるとされています。
しかし裏を返せば、HSPの人たちは残り8割の人々の共感を得にくく、無理に自分を周囲に合わせようとして「生きづらさ」を感じるケースも多々あるのです。
このようにHSPの特性は「生きづらさ」という点に帰着することが多いのですが、決して悪いことばかりではありません。
新たな研究では、HSPの存在が会社にとってポジティブな作用をもたらすことが示されたのです。