我々現代の人類が属する種ホモ・サピエンスは、初期の頃から驚異的な「適応能力」を持っていました。
その力により、極寒のシベリアから南アフリカの熱帯雨林にまで幅広く生活地域を広げて繁栄し、結果としてネアンデルタール人を絶滅に追い込んだ可能性があることを、最新の研究が明かしています。
https://www.nature.com/articles/s41562-018-0394-4
極端な環境でも支え合って生き抜くことができた「ジェネラリストでありスペシャリスト」のホモ・サピエンスは、予期せぬ自然の変化にも耐えうる頑丈な種へと進化していきました。
ネアンデルタール人をはじめとした多くの旧人類が絶滅してしまったのは、そのような「適応能力」がなかったためであると考えられます。適応能力がなかったために食糧源が限られ、住む場所も限定されてしまったのです。
これまで多くの研究が、様々なヒト科の動物の生き残り競争のカギは、「シンボルなどの伝達手段の発達」や「脳の大きさ」に帰結するといった主張をしてきました。しかし、ミシガン大学の研究者らによる新たな研究が、その主張が間違いであることを示しています。
300,000年~12,000年前の、更新世の考古学や環境のデータを分析することで、研究者たちはいかにホモ・サピエンスが素早く広範囲の土地を我が物とし、その場所で繁栄するために適応していったのかを明かしています。
およそ80,000年~50,000年前に、ホモ・サピエンスは他の人類よりも優位に立ったとされています。そして少なくとも45,000年前までには、旧北区やアジア、メラネシア、アメリカ大陸の熱帯雨林を支配し始めたようです。
そして、ホモ・サピエンスがそうして繁栄を始めたタイミングは、ネアンデルタール人が突如として姿を消した時期である、およそ50,000年前と一致しています。移動して環境を変える力を持たなかったネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスにすみかを奪われてしまったのかもしれません。
どんな時代においてもやはり、「適応できる者」が強いことが分かります。テクノロジーが発達した現代でも、その流れに取り残された人々は衰退していくことが運命づけられているのでしょうか。