筋肥大のためにも毎セット追い込む必要はない
以前の記事で取り上げた通り、近年の研究によって、筋トレの目的が出来るだけ筋肉を大きくすることにあるのか(筋肥大)、それとも筋力を最大限に高めたいのか(筋力向上)によって、追い込む目安が変わります。
このうち、筋肥大については、Repetition in Reserve(RIR)と呼ばれる、そのセットにおいて「あと何回繰り返せるのか」という追い込み度合いを表す概念を用いてメタ分析が行われた結果が参考になります。
その結果とは、RIRと筋肥大効果との間に線形関係が認められ、追い込むほど筋肥大効果が高まるというものです。
一方、フィットネス業界で10年以上の活動経験を持つマーティン・レファロ博士の研究グループは、これまでの研究にはRIRを推定する際に不確実性があるなどの問題点を指摘し、新たに実施したトレーニング実験の結果を発表しました。
その実験とは、3年以上の筋トレ経験を有する筋トレ愛好者たちを対象に、右脚と左脚のどちらか片方を毎セット出来なくなるまで追い込ませました一方、もう片方の脚では、あと1回もしくは2回余力を残して終了する(RIRが1~2)という興味深い内容でした。
トレーニングの期間は8週間、頻度は週2回、種目はレッグプレスとレッグエクステンションです。
結果として、意外なことに、大腿四頭筋(太ももの前面)の筋肉の厚さは、どちらも同じくらい増加しました。
つまり、毎セット1〜2回余裕を持たせて終わったとしても、出来なくなるまで追い込んだのと同じくらい筋肉が大きくなったのです。
ではなぜ、毎セット最後まで頑張ったのに、トレーニング効果が高まらなかったのでしょうか?
この理由の1つとして、最初の1セットから頑張り過ぎたことで、筋肉や神経が早くに疲れてしまい、2セット目以降のトレーニングの質が落ちたことが影響している可能性があります。
実際、この実験においても、セットが進むにつれての反復回数の減少は、毎セットできなくなるまで追い込んだ脚の方が著しくなっていました。
したがって、仮に追い込むことが好きな人であっても、序盤のセットでは、あえて余裕を残して終わり、終盤のセットまで余力を残した方が、結果としてトレーニング全体の負荷を高められるのかもしれません。
次のページでは、週当たりのセット数という観点から、頑張り過ぎなくても効果が得られることを説明していきます。