地面をどんどん掘っていくとマントルにたどり着く
地面をどんどん掘っていくとマントルにたどり着く / Credit:ナゾロジー
geoscience

アホみたいに穴を掘り続ける、マントル到達チャレンジ (2/2)

2025.02.08 17:00:31 Saturday

前ページマントルに届くまで地面をどんどん掘り続ける!

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超大陸の成り立ちや分裂はマントルの働き

確かマントルは対流していると習いましたよね。それは事実です。

でも、固体なのに何故対流?

マントルは対流していると学校で習った時に、ドロドロで灼熱のマグマがぐるぐると足元で沸いていることを想像して怯えたものです。

でも、安心してください。

マントルは高温・高圧の状態にありますが溶けてはいません。固体なのです。圧力でぎゅっと固体になっています。

マントルには温度の高い部分と低い部分があります。周囲のマントルより温度が高い部分は上昇し、その動きを「ホットプルーム」、温度が低くて下降していく動きを「コールドプルーム」と呼んでいます。

この上昇と下降が「対流」で、極めてゆっくりとした動きです。ちなみにこの対流が起きるのは地球が絶妙なサイズ感のおかげで、地球より大きいと圧力が高すぎて対流は起きません。

私たちが乗っている地殻は岩石のプレートで、プレートはマントルの動きに従って移動しています。マントルの対流はプレートテクトニクスのキモであるといえます。

地球は大陸が「動く」激レア惑星だともいえます。

ホットプルームは海底にマグマを押し上げる役割を果たします。マグマが押し上げられる地点はホットスポットと呼ばれます。

世界各地にあるホットスポット(赤丸部分)
世界各地にあるホットスポット(赤丸部分) / Credit: Wikimedia Commons

海底のホットスポットでもりもりと押し上げられたマグマは冷え固まり、プレートとなってマントルの動きに乗って動いていきます。

わかりやすいのがハワイです。

ワイ列島の下にはホットスポットがあります。そのためよく火山が噴火しています。ハワイ列島は太平洋プレートに乗って西へ向かって移動しているため、移動を続けてホットスポットから外れると火山活動を停止します。

たびたびニュースになるハワイでの火山の噴火
たびたびニュースになるハワイでの火山の噴火 / Credit: Wikimedia Commons

太平洋プレートの動きに乗って移動するハワイはやがて海へ沈み、海山となる運命。

ハワイ列島に連なる海山は、プレートの動きに従って最初北へ向かって移動していました。元は今のハワイの場所で火山島だったものです。

かつては「旧ハワイ」的な、別のハワイがあったのです。

プレートに乗って移動しているハワイ
プレートに乗って移動しているハワイ / Credit: Wikimedia Commons

北へ向かって移動した海山が天皇海山群です。その後4000万年ほど前からプレートは西への移動へ向きを変え、移動する方向を変えてからの海山をハワイ海嶺と呼んでいます。

これを上から見ると、カムチャツカ半島から南東へのびた天皇海山群が、途中でひらがなの「く」の字型に曲がりハワイへ続いています。

このふたつを合わせて「ハワイ-天皇海山列」と呼びます。

こんなにあるの!と驚くかつての「ハワイ」
こんなにあるの!と驚くかつての「ハワイ」 / Credit: Wikimedia Commons

現在人気の観光地ハワイ。芸能人の中には頻繁に訪れたり、移住したりする人もいるようですが、ハワイはいずれ火山活動を停止し、海に沈んでハワイ-天皇海山列の一部になります。

諸行無常……。

海底をゆっくり進むプレートはやがて大陸を作るプレートとぶつかって、その下へ潜り込み、徐々にマントルの中へ戻っていきます。大陸を作るプレートよりも重いためです。

この時のプレートのひずみがプレート境界型地震をもたらします。日本の、主に太平洋側で起きる地震の多くがこのプレート境界型地震で、これもまたマントルの働きによるものだったんですね。火山活動も起きやすくなります。

プレートはこうしてできる
プレートはこうしてできる / Credit: Wikimedia Commons

地球上にはハワイ以外にも、いくつものホットスポットが知られています。

中でも有名なのがアイスランドです。アイスランドではよく火山の噴火が起きていますが、あれはアイスランドが大西洋海嶺とアイスランドホットスポットの上にある火山島だからです。

それだけでなく、アイスランドはプレートの生成が海面より上の、地上で見られる地球上でもとてもレアな島です。プレートが生成されて大地が広がっていくので、アイスランドは常に大地が引き裂かれているといえます。

この裂け目は「ギャオ(ギャウ)」と呼ばれ、多くの火山が存在します。マントルが地殻へ向かってゆっくり登ってくる場所で、地殻が生まれてくる場所のひとつです。地球のダイナミックな動きを感じられる観光地としても人気です。

マントルの対流で引き裂かれるアイスランドの大地「ギャオ」
マントルの対流で引き裂かれるアイスランドの大地「ギャオ」 / Credit: Wikimedia Commons

そして、周囲より温度の低いマントルが沈み込んでいくポイントも存在します。

ここには極めてゆっくりと周囲のプレートが集まってきます。

現在、地球上に存在する大陸や島は、元は一つの巨大なパンゲアと呼ばれる超大陸でした。

超大陸「パンゲア」の姿。現在の世界はここから分裂して生まれた
超大陸「パンゲア」の姿。現在の世界はここから分裂して生まれた / Credit: Wikimedia Commons

このパンゲア大陸が分裂し、今の世界があります。ホットスポットがパンゲア大陸を引き裂いた結果です。

そして温度の低いマントルが沈み込む場所もあります。プレートは、この場所に向かって移動し続け、最終的にはマントルの中へ沈んでいきます。

つまり、パンゲア大陸が分裂して、いくつかの大陸や島になっている現在の世界は、再びひとつにまとまって超大陸を作る動きに乗っており、今から2億5000万年後に次の超大陸「パンゲア・ウルティマ」ができると考えられています。

「パンゲア・ウルティマ」。地表は再び超大陸へと姿を変える
「パンゲア・ウルティマ」。地表は再び超大陸へと姿を変える / Credit: Wikimedia Commons

それまでにも徐々に変わっていく世界地図の形。アフリカ大陸はふたつに引き裂かれ、動きの速いプレートに乗ってユーラシア大陸と合体したインド亜大陸は、今でもユーラシア大陸側に向かって動いています。

インド亜大陸がユーラシア大陸と合体したことで地殻に寄った「しわ」のようなヒマラヤ山脈は、押し上げられて今より標高が高くなるのでしょうか?日本列島はどうなるのでしょう。興味は尽きません。

そして「マントル到達チャレンジ」は現在も続けられています。

「ちきゅう」がいつマントルに到達するか、楽しみに見守りましょう。

マントルは8月の誕生石、ペリドットになるかんらん岩。私たちは宝石の上で生きているともいえる
マントルは8月の誕生石、ペリドットになるかんらん岩。私たちは宝石の上で生きているともいえる / Credit: Wikimedia Commons
【編集注 2025.02.10 10:00】
誤字の修正を行いしました。

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アホみたいに穴を掘り続ける、マントル到達チャレンジ (2/2)のコメント

mmec

個体× 固体○

( 'w')

マントルが緑なのは初めて知りました。面白く読ませていただきました。
ただ一点、「個体」は「固体」の誤変換ではないでしょうか。どうも気になってしまって…

ゲスト

何度も何度も「個体」って書かれてるのが気になってしょうがないです

    トシ

    このような事実を、見ると、地球は、生きて、動いている。
    人間も、生きて、動いている。
    宇宙も、生きて、動いている。
    森羅万象は、生きて、動いている。
    世の中の一つの真理***変動*変化*無常***を、実感させられます。

ゲスト

個体ではなく固体では?

漢字

個体ではなくて固体ではないでしょうか
確認後にコメントは消してください

とおりすがり

「個体」じゃなくて「固体」ですね。

ゲスト

つまりマントルまで簡単にたどり着けるようになればペリドットは掘り放題になってお値段がお安くなる可能性も…。

    オンリー

    他の記事に書いた自分のコメントの
    返信を確認出来る様にしませんか?

ゲスト

高温高圧下では、オレンジ色で、地表に出てきて冷えると緑色ということなのかな。

    ゲスト

    キーワードは構造相転移…

ゲスト

誤変換かと思ったら、全編にわたって「個体」なのは驚いた。わざと置換したのかな?
ライターさんが美大卒なのが関係あるかな?とすら思った。せっかく興味深い記事なのに。

ネコネコちん

2000mそこそこまでしか掘らなかったプロジェクトを紹介しながら1万2000mまで掘ったコラ半島超深度掘削坑についてはひとことの言及もないのおかしすぎる。

ゲスト

>高温高圧下では、オレンジ色

 この場合において、オレンジ色なのは高温のためで、高圧の方は不要ですね

ゲスト

>個体なのに何故対流?

 「個体」とは「個々独立に他の物とその存在を区別して認識されるもの」の事、「対流」とは「流体において温度や表面張力、溶質濃度などが原因により質量密度の不均質性が生ずるため、その内部で重力によって引き起こされる流動が生ずる現象」の事であり、対流が起きているのであれば流動によって攪拌されて混じり合うから、「個々独立に他の物とその存在を区別」出来なくなるため、対流している以上は個体として存在している筈はありません。

 仮にも科学情報サイトを名乗るなら「固体」と「個体」の区別くらいちゃんとつけてもらいたい!

ゲスト

太文字多すぎじゃない?ちょっと読みにくかったよ

toro

ありがとう。素晴らしいお話し

ゲスト

解説記事としては良い内容だと思いますが…
 個体→固体
のタイポ以外に、「地殻=プレート」という良くある誤解が気になります。

最初の方で
「マントルの上には「地殻」と書かれた、マントルと比べてとても薄いプレート」
という記述ありますが、これは間違いで、「プレート」は
 地殻+上部マントル
が正しく、リソスフェア(lithosphere)と呼ばれる部分です。

マントルを緑色で表現した図でも(フランス語ですが)右上の方に表記されています。
したがって、マントルの対流でプレートが動く、とは言いますが、正確にはマントル上部も地殻と一緒に動いていくのです。

ゲスト

マリアナ海溝は水深1万メートルのくせに、海底から2km掘ればマントル到達?は?

    ゲスト

    1. 海溝ではプレートが厚くなる
    ○マリアナ海溝のような「沈み込み帯」では、 ートが圧縮されて厚くなり、マントルまでの距離が伸びます。
    2. 深海底でもマントルは遠い
    ○ マリアナ海溝の最深部は水深約11kmですが、その下の地殻も比較的厚いため、マントルまでの距離は20km以上になると考えられています

ゲスト

「固体」と書くべきところすべて「個体」になっている。

ゲスト

誤変換なのかわざとなのか、凄く気になりライターの質を疑うレベルの記事
校正する人いないの?

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天皇海山列だけ見れば北から西へ。ほかの部分をみるとう~んと思える説。

Toshizo

マントルは固体なんでしょうけれど、野球のボールみたいに地球をつかんで投げることが出来るレベルのパワーにとっては、壊さないように神経使って投げなきゃならないほど、柔らかい球体なんだろうなと想像します。
地球サイズで考えれば、一粒が富士山みたいな大きさでも、マントル全体は砂が集まった流体みたいなモノなんでしょうね

ゲスト

面白い。
自分の知らないことを教えてくれる、こういう科学的な内容メッチャ好き。
ディスカバリーとかでやってくれないかな。

風来坊

小さい頃から考えては妄想していたのですが最新の技術で掘り進み最深部までの穴をトンネル見たいに残していわゆる宇宙エレベーターの逆でそのまま宇宙へ行けないのですか?すいません幼稚な質問で。

理系

パンゲアの形は具象的でわかりやすいのですが
p波とs波の伝播速度の違いでしか「観察」できないシロモノの「色」って、意味がないかも。
色は空中にさらされた時の波長でしか定義できませんからね。

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