臓器の再移植が難しい理由―拒絶反応の壁
臓器の再移植が難しい理由の1つは、免疫拒絶のリスクにあります。
私たちの体の細胞には、各人ごとに異なる「目印」が付いています。
これは、HLA(ヒト白血球型抗原)と呼ばれるタンパク質であり、私たちの体の免疫システムが、自己と非自己を認識するためのカギとなります。
血液型は4通り(A,B,O,AB)ですが、HLAは数万通りもあるため、異物と認識される可能性が高くなっています。
これは、ウイルスなどの病原体に対抗するには効果的ですが、移植医療では妨げとなります。
ドナーのHLAとレシピエントのHLAが異なるため、移植された臓器が異物として認識され、免疫反応により排除されてしまうのです。
私たちはこれを「拒絶反応」と呼んでいます。
そのため患者は、この拒絶反応を抑えるために、免疫系の反応を弱める薬「免疫抑制剤」を使用し続けなければいけません。
この免疫抑制剤の使用により、患者は他の感染症にかかりやすくなります。
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そして、「臓器の再移植」でも、この拒絶反応が大きな壁となります。
一度移植された臓器は、最初のレシピエントの免疫系と接触したことで、元のドナーのHLAだけでなく、最初の受容者のHLAも影響を受ける可能性があります。
つまり新たなレシピエントは、「元のドナーのHLA」+「前レシピエントのHLA」の両方に対して拒絶反応を起こすかもしれないのです。
UCLA Healthに所属する腎臓移植外科医のジェフリー・ヴィール氏も、「臓器の再移植では、拒絶反応のリスクが増す」と述べています。
追加のHLAにより、通常の移植よりも拒絶反応が複雑になり、危険が高まるのです。
もちろん、「臓器の再移植」を難しくさせるのは、拒絶反応だけではありません。
最初の移植手術の影響で、移植臓器の細胞や血管に変化が生じ、手術の難易度が上がることも課題となるのです。
とはいえ、これらのデメリットがあっても、臓器の再移植を行うことは不可能ではありません。
なぜなら過去には、臓器の再移植手術が何度か成功しているからです。