移植した臓器を再び利用した例
これまでに臓器の再移植は行われたことがあります。
例えば、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の2018年の研究では、腎臓が再移植された3ケースを分析しています。
1つ目のケースでは、最初の移植から2週間で再移植することになり、1年後も腎機能は良好でした。
最初に移植を受けたレシピエントが、術後2週間で脳卒中により亡くなったため、家族の同意により、別の患者へとすぐに移植されることになったのです。
2つ目のケースでは、最初の腎臓の移植から2年後に、その腎臓を再び利用することになりました。
このケースでは、一時的な機能低下があったものの後に回復しています。
3つ目のケースでは、あるレシピエントが腎臓移植された後すぐにトラブル(レシピエントに起因)が生じ、移植された腎臓を摘出することになりました。
この摘出された腎臓は、患者の承諾のもと、別の患者へ再移植され、術後2カ月でも腎機能が安定していると報告されました。
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またドイツのミュンヘン大学(LMU München)の1994年の研究では、心臓の再移植について報告されています。
心臓移植を受けた最初のレシピエントが術中に脳死したため、その心臓を2番目のレシピエントへと移植したのです。
術後の経過は良く、論文が執筆された時点では、2年以上が経過しているものの、患者は生存していました。
UCLA Healthのジェフリー・ヴィール氏は、これら過去の事例から、「まだ実験段階ではあるが、臓器の再移植は実現可能である」と述べています。
もちろん、前述したように拒絶反応のリスクは高まります。
それでも臓器移植を待つ患者が毎日何人も亡くなっていることを考えると、それらの人をいくらかでも救う可能性に目を向けることは大切です。
その対象が「自分の大切な人」だった場合、その可能性に希望を託したいは多いかもしれません。