タバコはかつて「万能薬」だった
タバコは私たちの身近にある植物の中で最も毒性の強いものの一つです。
タバコを原因とする死亡者は世界中で年間600〜700万人も出ています。
しかし科学の力によってタバコの有害さが暴露される以前、人類はタバコの中に”病を癒やす力”を見てきました。
今やタバコは世界中に広まっていますが、歴史的に見ると、その起源はアメリカ大陸の先住民たちにあります。
タバコ属は全部で60種以上が知られていますが、その原産地はアメリカ大陸にあり、何千年も前から現地の住民たちによって栽培が続けられてきました。
アメリカ先住民たちはもちろん嗜好品としてタバコを愛煙していましたが、その他に祈祷や儀式の道具にも使っています。
タバコの煙が神聖なメッセージを天に運ぶと信じられていたからです。
またタバコの葉っぱを噛んで頭痛や歯痛の痛み止めにしたり、傷や虫刺されの患部に塗る薬草としても使いました。
それから乾燥させたタバコの葉を煎じて飲めば、下痢止めや腸内改善にもなります。
![画像](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2025/02/960px-Native_American_with_smoking_pipe_offering_detail_from-_Fasting_3_cropped-481x600.jpg)
その後、15世紀にスペインの探検家たちがアメリカ大陸に辿り着き、あちこちで先住民たちがタバコの煙を楽しんだり、薬として使っているのを目にしました。
そして彼らは現地でタバコの葉を大量に仕入れて、ヨーロッパへともたらしたのです。
突如として現れたタバコはヨーロッパの医者たちにとって非常に刺激的なものでした。
嗜好品として楽しめるだけでなく、あらゆる病気の治療に役立つ「万能薬」と信じられたからです。
当時はまだタバコの裏の顔を暴くだけの科学が発達していなかったため、医師たちは伝えられるがままの俗信や迷信を鵜呑みにし、タバコを使った種々雑多なトンデモ医療がまかり通っていました。
その中でも特にブッ飛んでいたのが「タバコ浣腸」です。