掻くことはデメリットだけでなくメリットもある

これらの発見から、かきむしり行為がアレルギー性皮膚炎などの症状を悪化させる一方で、細菌感染に対する防御力を高める重要な役割を担うことがわかりました。
かきむしると皮膚に傷ができて炎症が進むのは確かですが、その陰で黄色ブドウ球菌などの増殖を抑えるメリットがあると考えられます。
これは「かきむしる」行為が進化の過程で残ってきた理由を説明するものであり、単なる悪習ではなく進化的に適応した仕組みといえるでしょう。
ただし、慢性的なかゆみに悩むアトピー性皮膚炎などの場合、掻きすぎで皮膚バリアを損ない、炎症コントロールを越えて悪化させてしまうリスクも大きいです。
今後は「かゆみ—掻く—炎症—免疫防御」という複雑な経路を分子レベルでさらに解明し、アレルギー性皮膚炎などを抑制しながら必要な免疫防御を保つ治療戦略の開発が期待されます。
今回の研究は、かゆみと免疫の関係に関する多くの謎に、新たな光を当てる重要な一歩と言えるでしょう。