ADHDの人のほうが「食料採取能力」が15%も高かったと判明
ADHDの人のほうが「食料採取能力」が15%も高かったと判明 / Credit:clip studio . 川勝康弘
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ADHDの人のほうが「食料採取能力」が15%も高かったと判明

2025.03.07 17:00:39 Friday

15 %以上高いようです。

アメリカのペンシルベニア大学で行われた研究によって、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向を持つ人々が、限られた時間内でより効率的に資源を見つけ出す――いわば「採食能力」の高さを示すことが明らかになりました。

一般には「集中力が続かない」「落ち着きがない」と捉えられがちなADHDですが、その特徴がむしろ新しいチャンスを探る「探索行動」において有利に働く可能性があるとしたら、一体どのような意味を持つのでしょうか?

研究内容の詳細は『Proceedings of the Royal Society B』にて発表されました。

Attention deficits linked with proclivity to explore while foraging https://doi.org/10.1098/rspb.2022.2584

なぜ“ADHD”が淘汰されなかったのか? 背景にある進化論

ADHDの人のほうが「食料採取能力」が15%も高かったと判明
ADHDの人のほうが「食料採取能力」が15%も高かったと判明 / オンラインの「茂み採食タスク」の画面構成を示した図。 中央にある茂みをクリック(あるいはカーソルを重ねる)するとベリーを収穫でき、収穫を続けるたびにベリーの残量は徐々に減少していきます。 いっぽう、画面の端にある「移動」ボックスへカーソルを移すと新しい茂みに切り替わりますが、そこで設定された「移動時間」を待たなければなりません。 このように、「茂みに留まるメリット」と「移動時間のコスト」を天秤にかけて判断させることで、参加者が“どのタイミングで茂みを見切るか”を研究者が観察できるようになっています。/Credit:David L. Barack et al . Proceedings of the Royal Society B (2024)

私たち人間を含む多くの生物にとって、限られた資源をどのように探し、どのタイミングで別の場所へ移動するかは、生存戦略を左右する重要なテーマです。

生態学の分野では、この「採食行動」を数理的に解き明かすために「最適採餌理論」が生まれ、蜂から鳥、サル、そして人間に至るまで幅広い種で検証されてきました。

一方で、ADHD(注意欠如・多動症)は集中力が持続しにくい、落ち着きなく動き回るといった特徴が挙げられる一方で、「探索」や「新しい刺激への強い関心」という側面も指摘されています。

ですがもしADHDが単なる障害ならば既に淘汰されてしまっていてもおかしくないのに、多くの人々に現在も残っている事実は、こうした性質が一定の環境では「才能」として働く場面もあるのかもしれません。

特に、遊牧民のような生活様式を持つ集団でADHD関連遺伝子が高頻度に見られるという報告から、ADHD的特性が環境によっては有利に働く可能性があるのではないかという仮説が提示されてきました。

しかし、実際にADHD傾向のある人がどのように資源を探索し、報酬を得る行動を取るのかは十分に解明されていません。

そこで今回研究者たちは、オンラインの「茂み採食タスク」を使い、資源の枯渇と移動コストをあえて設定した条件のもとで、ADHD自己申告スコアとの関連を徹底的に調べることにしました。

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