普通の人は「自分の噂」はイヤ。ナルシストだけが「人気者アピール」に変換する!?
この研究のきっかけとなったのは、社会の中で“ゴシップ”が果たす複雑な役割にあります。
ゴシップとは、第三者が不在の場でその人物について話す行為であり、ネガティブな内容だけでなく、ポジティブな話題も含まれます。
従来の心理学では、ゴシップは集団の結束を高めたり、社会的ルールを共有する手段として扱われてきました。
よく飲み会などでは、本人がいない状況でその人の話題が上がったりすることがよくあります。こうした行為が悪口であれ、褒め言葉であれ、集団の結束に影響するというのです。
確かにこれはイメージしやすい問題ですが、しかし、話題にされる本人は、いないところで自分の話をすることにどう感じているのでしょうか?
一般的に考えて、あまりいい気はしないと予想できますが、こうした“ターゲットの視点”は心理学の研究でこれまで見過ごされがちでした。
そこで研究者たちは、「人は本当に話題にされることを嫌うのか? それとも歓迎する人もいるのか?」という問いに注焦点を当て、性別・年齢・個人特性と、陰口への反応の関係を調査したのです。
特にここでは被験者のナルシシズム(自己愛)傾向も測定されました。
「ナルシシズム」とは、自分のことを特別でスゴい存在だと思っている心理傾向のことです。

ギリシャ神話に登場するナルキッソスという美少年が、池に映った自分の姿に見とれて池に落ちて命を落とした、という伝説が「ナルシスト(自己愛的な人)」という言葉の語源です。
研究者はこの傾向が「注目されたい」「特別扱いされたい」という欲求と深く関係しているため、陰口に対する反応と強く関連すると予測したのです。
この研究では、アメリカの全国的な調査パネルや大学生サンプルを用いた5つの実験が実施されました。
被験者たちは、「ポジティブな陰口」「ネガティブな陰口」「あいまいな陰口」「全く話題にされない」など、さまざまなシナリオを読んだうえで、「自分がその場で話題にされたとしたらどう感じるか?」を1〜6段階で回答しました。
すると非常に興味深い傾向が見えてきたのです。