画像
Credit: NASA – NASA Research Examines the Multicellular Behavior of Unique Bacteria(2025)
biology

「単細胞」から「多細胞」へ進化している真っ最中の生物か⁈ (2/2)

2025.04.22 20:00:33 Tuesday

前ページ単細胞から多細胞の生物はどのように進化したのか?

<

1

2

>

単細胞から多細胞に進化している真っ最中?

細胞性磁気走性細菌(MMB)が最初に見つかったのは、1980年代のことです。

米マサチューセッツ州にある塩性湿地で発見され、単細胞の細菌ながら、多細胞のように生きる不思議な習性に専門家らの注目が集まるようになりました。

まずは名前にもある通り、MMBは磁石のような性質を持っており、磁場に沿って移動するのです。

彼らは細胞内に「マグネトソーム」と呼ばれる小さな磁石粒を持ち、地球の磁場を手がかりに移動します。

このことから「磁気走性(magnetotactic)」という名称が付けられました。

これだけでもかなり珍しい特徴ですが、もっと驚くべきなのは、その生き方です。

画像
MMBコンソーシアムの拡大図Credit: NASA – NASA Research Examines the Multicellular Behavior of Unique Bacteria(2025)

MMBは常に15〜86個の細胞が集まった球形の”コンソーシアム(集団・組織)”という形で存在しており、単細胞生物なのに単独になると生きられないのです。

もし細胞が一つずつバラバラに引き離されると、すぐに死んでしまうことが実験で示されました。

つまり、最初から「集まっていること」が生存に不可欠な仕組みになっています。

これまで細菌の集団は、必要に応じてバラバラになるものと考えられてきましたが、MMBは違います。

一つのまとまりとして生き、分裂するときも全体で数を倍増させ、その後ふたつの同じ集団に分かれるのです。

画像
MMBコロニーのライフサイクルと増殖の仕方Credit: NASA – NASA Research Examines the Multicellular Behavior of Unique Bacteria(2025)

さらに今回の研究では、コンソーシアムを形成するMMBの細胞がすべてクローン(同じ遺伝子を持つコピー)ではないことも明らかになりました。

細胞同士で微妙に遺伝子が異なっていたのです。

また、各細胞は代謝活動にも違いがあり、それぞれ異なる役割を担っていました。

ある細胞はエネルギー源を多く取り込み、ある細胞はタンパク質合成を活発に行う、そんな分業が起きていたのです。

これはまるで、骨細胞や神経細胞がそれぞれの役割を担っている私たち多細胞生物の体に似ています。

しかもMMBは、有機物(酢酸やプロピオン酸など)も無機物(炭酸水素)も使いこなしながら生きる混合栄養型の生き物であり、多様な環境変化に対応できる柔軟さも持っていました。

これらの特徴から、MMBは「単細胞と多細胞の中間」に位置する非常に貴重な存在だと考えられます。

つまり「単細胞から多細胞へ進化する、その”過渡期の瞬間”を私たちは目撃しているのかもしれない」と研究者も指摘するのです。

私たちの体を形作る多細胞生物への進化の謎。

そのヒントが、この肉眼では見えない小さなMMBの中に隠されているかもしれません。

MMBの研究は、生命の根源に迫る冒険の一歩として、これからますます注目されることでしょう。

<

1

2

>

「単細胞」から「多細胞」へ進化している真っ最中の生物か⁈ (2/2)のコメント

微生物学者OB

“magnetotactic”は“走磁性”と訳されるのが普通です。

ゲスト

多細胞から単細胞に移行する瞬間でもある

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

生物学のニュースbiology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!