史上初の『ブラックホール爆弾』を研究室内で作成することに成功
史上初の『ブラックホール爆弾』を研究室内で作成することに成功 / Credit:M. Cromb et al . arXiv (2025)
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史上初の『ブラックホール爆弾』を研究室内で作成することに成功 (3/3)

2025.04.28 17:00:12 Monday

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量子真空・暗黒物質探査の新兵器

量子真空・暗黒物質探査の新兵器
量子真空・暗黒物質探査の新兵器 / 図は、まるで「宇宙エネルギー増幅装置」の設計図のように、金属シリンダが波をどう強くするかを3コマ漫画で示しています。左の輪っかは3つあり、①シリンダがない宇宙空間では波(紫の矢印ロケット)がそのまま通過し、②シリンダがゆっくり回ると波が吸い取られて消え、③シリンダが高速回転すると波が一気にパワーアップします。右側では実験に使った本物の装置を透かし図で示していています。/Credit:M. Cromb et al . arXiv (2025)

このようにして、研究室内における史上初の「ブラックホール爆弾」の再現に成功したわけですが、これは一体どんな意味を持つのでしょうか。

まず第一に、50年来の物理学の問いに対するエポックメイキングな実証であることは間違いありません。

ゼルドビッチが予言し、誰もが「無理だろう」と思っていた回転体によるエネルギー増幅が、工夫次第で実現可能であると示されました。

音波での検証や低周波での兆候は以前からありましたが、電磁波という本命の領域で実際に正の増幅と自発発振(自己振荡)を確認できた意義は極めて大きいです。

これは重力を使わずにブラックホールの物理を模倣できたということであり、重力場を持たない私たちの身近な環境でも類似の物理現象が起こり得ることを示唆します。

極論すれば、「ブラックホールがなくてもブラックホール的なエネルギー放出を起こせる」わけで、これはとても驚くべきことでしょう。

次に、この成果は将来のさらなる探究に向けた道を開きます。

今回の実験ではノイズがトリガーとなって波が成長しましたが、理論的には量子的なゆらぎ(真空揺らぎ)すら種になり得るとされています。

ゼルドビッチは当初、量子真空からエネルギーを引き出し回転体が減速する現象としてこの効果を語っており、それこそがホーキングによるブラックホール蒸発の着想源にもなりました。

研究チームは今回、現実的なレベルの熱ノイズなどから発振させましたが、将来的には温度を下げたり真空に近い条件を作ったりして「より微小な揺らぎ」から増幅を始めさせることを目指すでしょう。

もしそれが実現すれば、量子摩擦(量子真空による見えない摩擦抵抗)の直接検出といった、より深遠な物理の実験に繋がります。

実際、論文でも「ノイズからの指数増幅はブラックホールの不安定性の理論研究を後押しし、将来的には量子真空をシードとするゼルドビッチ効果(量子摩擦)の観測へ道を拓く」と述べられています。

さらに広い視点では、ブラックホール爆弾に関連する現象は宇宙の中にも潜んでいる可能性があります。

例えば近年の研究では、ブラックホールの周囲に存在し得る超軽量の粒子(例えばアクシオン)の場がブラックホールからエネルギーを引き出し「粒子の雲」を成長させる現象が提唱されています。

これはブラックホールに自然の鏡を与えるようなもので、結果的にブラックホールの回転が減速し、エネルギーが重力波などで放出されるかもしれないと予想されています(まさに宇宙版ブラックホール爆弾です)。

今回の実験は、そのような宇宙で起こり得るかもしれない超放射的インスタビリティ(不安定増幅)を地上で模擬したとも言えます。

もちろん実験の「爆弾」は安全な玩具モデルであり、すぐに宇宙エネルギーを取り出せる技術に直結するものではありません。

しかし、この成果によってブラックホール物理で議論されてきたエネルギー増幅メカニズムが現実のものとして目の前に姿を現したのですから、科学者たちの興奮は大いに高まっています。

最後に、今回の研究成果を踏まえて研究者のコメントを紹介しましょう。

論文著者の一人は、その意義を次のように語っています。

「私たちの実験は、回転する吸収体から回転エネルギーを引き出して電磁波を指数的に増幅できることを、低い周波数領域で示しました。

さらに興味深いことに、この不安定な増幅がオンとオフを切り替えられる(ローターのエネルギー損失によって増幅が停止する)ことも示したのです」。

半世紀前に提唱された理論に実験でを当て、新たな知見を加えたこの成果。

史上初の「ブラックホール爆弾」の創出は、宇宙と量子の交差点に新たな扉を開いたと言えるでしょう。

今後、この小さな爆弾からどんな物理学の花火が打ち上がるのか、楽しみに待ちたいと思います。

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史上初の『ブラックホール爆弾』を研究室内で作成することに成功 (3/3)のコメント

Shiho

科学の発展は素晴らしい事だが、それにより 邪な考えを持たない天才を生まないことを祈る

ゲスト

効率はあまりよくなさそうですけどアンプとかにも使えそうな雰囲気ですね。
ブラックホール爆弾なんていう名前ですからカバラ機関積んでる某アーマードモジュールとかガンダムそっくりな某パーソナルトルーパーの方想像しちゃいましたよ。

23℃

ダライアス外伝

    14292

    カルネアデス計画 バスターマシン3号の事ですね。

kiri

こういう研究は一刻も早く全面的にやめてもらいたい。宇宙そのものを破壊する事象の引き金になる

    ゲスト

    戦争とかに使われたら怖いですよね

ゲスト

バスターマシン3号

カズミ

バスターマシン3号

ゲスト

ノイズからエネルギー? では宇宙マイクロ波背景放射で発電すれば無限エネルギー?

提督

カルネアデス計画がついに!

ゲスト

「ブラックホール爆弾が起き得る可能性が高い事を証明する実験装置」が想定した通りの挙動を示した事が確認されたのであって、「ブラックホール爆弾そのもの」を研究室内で作成することに成功したわけではないのですね。

努力と根性

宇宙怪獣が現れても木星を潰さなくて済みそうだね?

ゲスト

人類自爆装置の開発ばかり熱心

七氏

音のほうが気になる〜
無音の回転体からやがて音がしだすんやろか?
耳鳴りみたいな音しか思い付かんのやけど、どんな音がするんだろう?

ゲスト

戦争とかに使われたら怖いですよね

抵抗勢力

インフレーション宇宙を起こした神は回転していたのか

きこ

BH生成とかそのうち地球が飲み込まれたりしてw

ゲスト

早く家庭で作れるようにならないかな

じいさんのつぶやき

こういう内容は発表してはいけません

だから僕は学会に所属せず発表せず 特許も取らず 研究しています
重力爆弾を作れば我々の宇宙はなくなるし 宇宙の創造主にもなれます

つまり 神になれます

従って 重力や 時空間の制御はその技術は 発表することが反対の面を常に持っていることを気をつけないといけません

お気を付けください

実験計画 すら 発表してはいけません

    ゲスト

    新型爆弾で東京を爆破してください

フニャ

ブラックホールで起きてるのと同じ物理現象を重力を使わなくても起こせたという実験で、ブラックホールを作ったわけではないでしょ

ゲスト

ブラックホールを直接ぶつけた方が強そう❗️

ブラックホール隕石爆弾 ⚫️

ゲスト

うまく応用すると、メーザー(ここでは電波の周波数領域でのレーザーだと思ってください)のエネルギー励起源やエネルギー効率のいい粒子加速器を作れそうですね。
後勿論、電子パルス兵器・EMP兵器の小型化と非核化にも使えそう。

ゲスト

波動砲原理とフライホイールによるエネルギー保存はこれでOKだな

ジムニ

まずは縮退炉を作らないと

ゲスト

映画だと暴走して周りの物質を全て吸い込みだし、主人公がそれを食い止めハッピーエンド

チャ電子巣

こうして先ずは兵器の理論が生まれる。
先に破壊、次に創造、そうして人類は進化してきた。次はどうなるか、それがどれだけの間続けられるか、見物ですね。

ゲスト

エネルギー保存法則に違反してないかな?

オンリー

実戦配備はまだまだ先だよな。

ぴーにゃ

んー、紛らわしい見出しだなぁ…

ゲスト

なんだ此処のコメ欄は匂い立つなぁ・・・

多板

この記事だけだと誘導モーターの再発明のように見えるのだけど、現論文ではどうなんだろう。

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