“着ぐるみ”を剥がせ――治療標的としての偽装回路

今回の研究で新たに浮き彫りになったのは、赤痢アメーバがヒトの細胞膜をまとうように偽装し、不均一な倍数性やRNA干渉を組み合わせて柔軟に遺伝子を制御できるという点です。
この仕組みによって、環境変化や免疫細胞の攻撃といった厳しい条件下でも、形質を自在に変えながら生存や増殖を続けることが可能になっていると考えられます。
実際、ヒト由来の膜タンパク質を表面に取り込む動きは、単純に外側を覆うだけでなく、免疫系に「自分の細胞」と錯覚させる点で非常に巧妙です。
一方で、こうした偽装やアニュープロイディを支える分子機構を解明できれば、ピンポイントでそれらを阻害する薬剤の開発も視野に入るかもしれません。
たとえばCRISPR/Cas9を用いる研究が進めば、より正確に病原因子を切り分ける技術が確立され、今後の治療戦略に大きく貢献すると期待されています。
ただし、ヒトとは異なるゲノム構造や増殖サイクルが障壁となり、実用化にはさらなる研究と時間が必要です。
それでも、赤痢アメーバの特異な性質を理解することは、従来の薬剤に頼るだけでは対処しきれない感染症対策へ向けて重要な一歩になるでしょう。
抗がん剤に同じがん細胞の皮を被せることが出来れば、彼らの免疫逃避能力を無力化できたり?
自己免疫疾患の人ではあまり発病しなかったりとかもあるのでしょうか。