「史上最強の太陽嵐」の証拠を発見
太陽嵐(たいようあらし)とは、強烈な太陽フレアが発生した際に太陽風が爆発的に放出され、そこに含まれる何十億トンものプラズマ粒子が飛来し、地球の大気にぶつかる現象です。
これにより、地球近傍を飛んでいる人工衛星を故障させたり、地上の通信ネットワークなどを遮断したりする被害が起きます。
また太陽嵐により、地球の極地でオーロラが発生することも有名です。
その一方で、太陽嵐に関する人類の記録は断片的であり、その最大規模を推定するのは困難でした。
しかしこれまでの研究で、太陽嵐が地球大気にぶつかると、放射性炭素(炭素14)の生成量を一時的に増加させることが知られています。
これは太陽から放出される高エネルギーの粒子が大気中の分子と衝突して生成されるためです。
この炭素14は地上の樹木や動物などに取り込まれ、やがて一定の速度で減衰していきます。

そして研究チームは、この炭素14濃度の急激な増加の痕跡を調べることで、今回の「史上最強の太陽嵐」の存在を特定することに成功しました。
チームは特別に開発された気候・化学モデル「SOCOL:14C-Ex」を用い、古代の樹木や氷床コアを分析したところ、紀元前1万2350年ころ(今から約1万4000年前)に、人類の記録上最強の太陽嵐が発生していたことが判明したのです。
これまでにも同様の強烈な太陽嵐イベントは西暦994年、紀元前660年、紀元前5259年、紀元前7176年に起きていたことが特定されており、その中でも西暦774年の事例が最大とされていました。
しかしチームの解析によると、紀元前1万2350年の太陽嵐は、西暦775年の太陽嵐よりも約18%強力だったと推定されています。
さらには人工衛星による正確な観測が始まって以来の最強の太陽嵐は2005年に発生していますが、紀元前1万2350年の太陽嵐はそれより500倍以上の強度があったと試算されたのです。
では、なぜ当時の太陽嵐はこれほど強烈だったのでしょうか?