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臨床試験で「たった20分」の幻覚剤吸引で自殺念慮を長期持続的に急減させると判明 (3/3)

2025.05.20 18:00:20 Tuesday

前ページ20分で“死にたい”が消えた──吸入DMTが難治性うつを一発逆転

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超短時間×長期改善の理由を探る

超短時間×長期改善の理由を探る
超短時間×長期改善の理由を探る / Credit:Canva

今回の試験結果は、吸入型DMTによる超短時間の幻覚セラピーが、従来治療が無効だったうつ病に対して即効性かつ持続的な効果をもたらしうることを示しています。

研究チームは「たとえごく短時間のサイケデリック体験でも、安全で支援的な環境下で行えば、うつ病を急速かつ持続的に改善できる」という点を本研究の主要な発見だと位置付けています。

中でも「24時間以内に多くの参加者で深刻な自殺念慮が解消し、その効果が数か月後にも持続していた」ことは特筆に値し、「緊急性の高い臨床状況で極めて価値がある可能性がある」と強調しています。

実際、自殺リスクの高い患者に対しては即座に効果を発揮する治療が求められますが、現行の抗うつ薬ではこのニーズに応えるのが困難でした。

DMTによる療法は、この「すぐ効いて命を救う」という点でも大きな期待を集めています。

さらに吸入DMT療法には実用上の利点も数多くあります。

他の長時間型サイケデリック(例えばシロシビンやLSD)では一回のセッションに数時間かかるため、専門施設での長時間監督が必要とされますが、DMTは効果が短いため準備・投与・事後ケアまで含めても1日で治療が完結する可能性があります。

患者は入院せずに外来通院で受けられるうえ、医療従事者の付き添い時間が短くて済むため、治療コストも抑えやすいと指摘されています。

またDMTは薬理学的相互作用リスクが比較的少なく、今回の試験では一部の患者が抗うつ薬を継続しながらでも安全にセッションを受けられました。

言い換えれば、吸入DMT療法は他の治療を中断せずに併用しやすい点でも現実的です。

以上のように、吸入型DMTはこれまでのサイケデリック療法にはなかった「超短時間・外来完結・即効&持続」という三拍子が揃った抗うつ治療の新たな候補と言えます。

研究チームも、今回の知見はこの手法が「治療抵抗性うつ病治療のゲームチェンジャー(ゲームの流れを変える存在)になり得る」と示唆していると評価しています。

とはいえ、現時点では小規模(14人)の予備的研究結果であり、慎重な解釈が必要です。

本試験は偽薬対照のないオープンラベルデザインで行われたためプラセボ効果の影響を完全には排除できず、研究陣も「フェーズ2a段階の予備的研究で参加者数も少ないため、結果の解釈には慎重さが求められる」と述べ、過度な楽観は戒めています。

今後はプラセボ対照を組み入れたランダム化比較試験で結果を検証し、再現性を確かめることが大きな課題です。

また、複数回のDMT投与時の効果持続や、安全性プロファイル(心血管系への影響など)の詳細、患者の期待度や過去の幻覚剤使用歴、併用薬との相互作用といった要因も検討が必要となります。

それでも今回の成果は、従来は数週間かけても得られない改善を「たった1日で」達成し、それが数か月続く可能性を示した点で画期的です。

DMT吸入セラピーが今後の大規模試験で有効性と安全性を確立できれば、慢性的なうつ病に苦しみ既存治療に望みを失った多くの患者にとって、真の意味でのゲームチェンジャーとなるかもしれません。

研究者らは、この新アプローチが将来的に公的医療システムにも組み込みやすいコスト効率の高い治療として普及し、必要とする人々により迅速な救済をもたらすことを期待しています。

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臨床試験で「たった20分」の幻覚剤吸引で自殺念慮を長期持続的に急減させると判明 (3/3)のコメント

ゲスト

まあ、抗うつ剤って要するに麻薬ですものね、アッパー系の。
それなら本物の麻薬使うほうが効くのは当然かと思います。
鬱になってても好奇心は消えませんから、それを幻覚によって限界まで刺激されたことで道が開けたのでしょうね、私はうつはやったことはないですけど近い経験はありますからそれはよく分かりますよ。

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