なぜ見つかりにくいのか?
それにしても、なぜこのような巨大動物がこれまで“野生で見た者がいない”という扱いだったのでしょうか?
理由は、彼らの非常に慎重で隠密なライフスタイルにあります。
まず、マロミス・イスタパンタップは完全な夜行性です。
夜になると静かに木に登り、植物をついばむように食べ、昼間は地中の巣穴や樹上の茂みに隠れて過ごします。
しかもその生息地は、アクセス困難な山岳地帯の奥地—人の足がほとんど踏み入れない霧と急峻な地形の中。
さらに彼らは、他の大型哺乳類との競争相手が少ないこの地域で、数百万年という時間をかけて独自の進化を遂げてきたのです。
ニューギニアの高地では、他の大多数の哺乳類がおらず、ネズミ亜科の齧歯類が“ニッチ”を独占的に活用することで、これほどのサイズに進化することができました。

今回の発見では、ヴェイメルカ氏は映像や写真だけでなく、野生個体の生体計測、糞の分析を通じた食性データ、寄生虫や行動パターンなど、かつて得られなかったあらゆる情報を収集。
調査対象の範囲も広く、全体で61種の哺乳類(齧歯類と有袋類)を同定し、遺伝子解析によって分類を明確にするという成果も挙げました。
その成果は、生物多様性の宝庫であるニューギニアの「未開の山岳地帯」における哺乳類相の輪郭を初めて浮かび上がらせるものであり、マロミス・イスタパンタップはその象徴的存在となったのです。
今回の成果は、現地の先住民の知識と国際的な科学者の協力によって初めて実現しました。
「私がこのデータを収集できたのは、山中で同行してくれた先住民の狩猟者たちの助けがあってこそです」とヴェイメルカ氏は話しています。
大きくても見た目はやっぱりネズミさんなんですね。