美味しいは認知機能を上げる

今回の研究は、短時間の食事でもその「美味しさ」次第で脳のパフォーマンスやモチベーションが変化し得ることを示した初めての報告です。
わずか数分間で脳波のパターンが変わり、続いて行われた課題の処理速度が向上したことから、味覚の満足感が脳を素早く活性化させ集中モードに入れる一因となりうると考えられます。
一般にお腹が満たされると眠気に襲われる(いわゆる食後の眠気)ことが知られていますが、それとは逆に、本当に美味しい食事であれば脳をかえってシャキッと目覚めさせ、集中力を高めてくれるのかもしれません。
特に美味しいものを食べた後に顕著だった左脳の活性化(左前頭部のα波低下)は、「もっとやってみよう!」という前向きな意欲が引き出されているサインと言えるでしょう。
研究グループは「本研究では、私たちの生活に身近な冷凍炒飯の美味しさが、食後の認知活動や作業効率に影響を与えることを脳科学的に確かめました。まだまだ検討の余地はありますが、今後の昼食の取り方などにも活用できる基礎的な研究成果の一つだと考えています」とコメントしています。
この成果は食品科学や認知神経科学の分野でも注目されており、今後は認知症予防への応用や学習・作業効率の向上、さらにはスポーツにおけるパフォーマンス最適化など、様々な展開が期待されています。
例えば、高齢者が「美味しい」と感じる食事を積極的に楽しむことで脳を刺激し、認知症のリスク低減につなげる試みが考えられます。
また、子どもや学生が勉強前に少量の好物を食べて集中力を高める工夫や、スポーツ選手が試合前に好きな食べ物でモチベーションを上げるメンタルトレーニングなど、応用の方向性は幅広く期待できるでしょう。
実際、冷凍食品メーカーとの産学連携により、日常食で脳機能を高めるといった「おいしい×脳」の新しいアプローチが今後進むかもしれません。
では、この知見は私たちの生活にどう活かせるでしょうか。
例えば、午後の仕事や勉強で集中したいときには、単に空腹を満たすだけでなく「おいしい!」と感じられる昼食やおやつを選んでみるのも一策です。
美味しい食事で気分が上がれば、脳のスイッチが入り集中力が高まることが今回の結果から示唆されます。
好きな食べ物で脳を目覚めさせて、その後のパフォーマンス向上につなげてみてはいかがでしょうか。