脳トレゲームで脳を変え、痛みを軽くすることに成功
この研究に参加したのは、角膜の神経障害性疼痛「CNP」を患う4人の被験者です。
彼らは事前に7〜17日間のランダムなベースライン観察期間を過ごし、日々の痛みの強さと生活への影響(pain interference)を記録していました。
その後、4週間のトレーニングと2回のフォローアップを経て、3人の参加者において著しい痛みの軽減が確認されました。
これは麻薬性鎮痛薬「オピオイド」と同等かそれ以上の鎮痛効果だったようです。

興味深いことに、患者自身が「この方法は自分で痛みをコントロールできる感じがする」と高く評価していた点も明らかになりました。
脳は、痛みそのものを作り出す中枢でもあり、その働きをうまく調整することで、痛みの感じ方も変えることができるというのは、現代神経科学の重要な知見です。
今回の研究は、EEGフィードバックによってこの「脳の自己調整力」を鍛えることが可能であることを示す貴重な事例となりました。
とはいえ、この方法がすべての患者に有効というわけではありません。
しかも今回の被験者数は4名と少なく、1名には目立った効果が見られませんでした。
また、視覚的な変化に対する反応には個人差が大きく、一人ひとりの脳波パターンに応じた「パーソナライズ化」が今後の課題となります。
それでも、「薬に頼らず、自宅でゲームを楽しむだけで、自分の脳と向き合って慢性的な痛みを軽減できる」という可能性は、神経障害性疼痛で苦しんでいる人にとって大きな希望となります。
もしかすると将来、「痛みの治療=脳トレゲーム」という時代がやってくるかもしれませんね。