重力を計算資源にする「時空コンピューター」の基礎理論が発表
重力を計算資源にする「時空コンピューター」の基礎理論が発表 / Credit:clip studio . 川勝康弘
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重力を計算資源にする「時空コンピューター」の基礎理論が発表 (3/3)

2025.06.09 18:30:48 Monday

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重力は次世代チップになり得るか

重力は次世代チップになり得るか
重力は次世代チップになり得るか / Credit:clip studio . 川勝康弘

この研究は一見すると非常に理論的ですが、情報科学と重力理論を結ぶ新たな地平を開くものとして注目されています。

ベルテストが量子情報革命の礎となったように、今回の成果は重力を使った情報処理という未知の領域への第一歩かもしれません。

「重力を『計算資源』に」という表現が示す通り、具体的な装置モデルを前提にせずにテスト結果だけで因果順序の動的性を判定できる点が特徴です(想定シナリオ自体は、巨大質量を自在に動かすという極端なものです)。

これは現実的な実装がすぐ可能という意味ではなく、理論上の上限や原理的な可能性を明らかにしたということです。

実際、著者らは論文中で「動的な時空は静的背景では不可能な情報処理タスクを可能にするだろうか?」と問いかけています。

これはちょうど、量子計算が古典計算では不可能なタスクを実現するかを問うのに似ています。

重力によって因果順序を変えられれば、現在のコンピューターでは解けない問題を解決できる可能性があるという大胆な発想です。

さらに興味深いことに、この不等式の違反は重力波の検出とも関係しうると指摘されています。

違反が観測されること自体が曲率変化のサインですから、例えば遠方で発生した重力波がゲーム空間を通過して時空をわずかに揺さぶれば、それによって勝率が上昇し11/12の壁を越える可能性があります。

著者らも「この手法は重力波の検出に使えるかもしれない」と述べ、将来的な応用に言及しています。

重力波検出器といえば巨大なレーザー干渉計が思い浮かびますが、もしかすると未来には「多人数ゲーム」の統計から重力波を炙り出す、といった奇抜な技術も登場するかもしれません。

本研究には第三者の専門家も注目しており、フランス・パリ=サクレー大学のパブロ・アリギー教授(量子計算・量子重力研究者)は「ブラックホールの縁でタイムスロウ(時間の遅れ)を利用して計算する、そんな極端なアイデアにも一般的な物差しができた。」とコメントしています。

例えばブラックホール近辺では強烈な重力場によって時間の進み方が遅れるため、これを利用した「重力計算」のSF的アイデアさえあります。

しかし従来そうした議論を評価する統一的な指標はありませんでした。

今回提案された不等式は、そうした突拍子もないアイデアにも客観的な基準を与えてくれる可能性があります。

言い換えれば、「重力で計算する」とはどのような現象であり何が可能で何が不可能なのか、議論するための共通言語が生まれつつあるのです。

哲学的な視点でも、この研究は私たちに新たな問いを投げかけます。

イベント(出来事)とは何か?――因果関係の順序が揺らぎうる世界では、「ボタンを押す」「信号を送る」といった日常的な出来事でさえ、その意味を再定義しなければならないかもしれません。

私たちは普段、時間の流れと因果の矢印を当たり前の前提として物事を考えています。

しかし重力と情報を絡めたこのゲームの中では、その前提が破られる場面が出てきます。

時空の構造が動的に変化することで、原因と結果の関係が一時的に曖昧になるような事態さえ想定されるのです。

こうした極限状況を突き詰めていくことで、逆に「イベントとは何か?」という基本的な哲学問いに新たなが当たるかもしれません。

最新の成果として報告されたこの「メビウスゲーム」は、重力と情報科学という異色のコラボレーションから生まれました。

「重力で動く“時空コンピューター”は作れるのか?」という大胆な問いかけに対し、まずは「それを判断する基準」が提示されたと言えます。

今後この不等式が実験的に検証され、もし現実世界で違反が観測されるようなことがあれば、そのとき私たちは科学史に残る大きな一歩を目撃することになるでしょう。

計算のために重力そのものを利用する――そんな未来が果たして訪れるのか、想像するだけでも胸が躍ります。

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重力を計算資源にする「時空コンピューター」の基礎理論が発表 (3/3)のコメント

ゲスト

>「質量を動かす ➔ 時空がゆがむ ➔ 信号の通り道が変わる
質量を動かす=光速移動。でも、この方法は量子コンピューターです。
光速移動すれば、時空が歪むと考えているようですが、間違いです。

凡人の理論物理学は、この程度が限界。

また

理屈だけの実証0かな、ミクロとマクロの違いや、磁場や温度の違い、時間がごく短いと
成立しないとか、ありそうだね。
量子ゆらぎ関係も説明にはいっているならわかるけど、まあ夢だ、FRC核融合の1000兆分の1ぐらいは夢がなされそうな領域かな、
ビックバン理論が崩壊できる可能性のほうがはるかにたかそう。

きこ

ライターもよくこんなの分かるね
俺は物理学は苦手だよなぁ

ゲスト

時間経過は川の流れみたいなもので、重力場は距離を伸び縮みさせる現象みたいなイメージがあるな
縮んだ道を通ることで、笹舟AとBのゴールの順序が逆転することはあるかもしれないが、これは厳密には因果の逆転とは違うんじゃないかと思った
結局スタート地点のタイムラインに変化はなさそうなので
日常でも例えばレース中に近道を通ることでゴールの順序が変わることがあるかもしれないが、それで因果が逆転するわけじゃないよね
何か見落としがあるだろうか

ゲスト

川の流れを検知して、笹舟AとBのゴール順序を進んでる途中に操作できんじゃね?って話かと思った。知らんけど。

う○こちん○ん

大きなおもちゃつくって満足か?

g.a

そもそも一般相対論では過去に戻るタイムマシンが可能なんだから計算する前に結果を知ることだって可能だろ。(ただのカンニング?)

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